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雲は遠くて
96章 信也と利奈、セカオワや ニーチェを語る
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おれ、それ読んで、なるほどなぁって、共感しちゃったよ。あっはは」

「そうよね。わたしも、みんなが、美しいものや、芸術とかを、真剣に愛したり、
気軽でもいいから、楽しんだりすれば、世界は平和になっていく気がする!お兄ちゃん。
その本って(なん)なの?今度わたしに貸してほしいわ!」

「今度持ってくるよ。斎藤孝さんの『座右のニーチェ』っていう光文社の新書だよ」

「あああ、ニーチェね!しんちゃんや、清原美樹さんが大好きな、ニーチェね!わたしも好きよ」

 そういって、どこか悪戯(いたずら)っぽく微笑(ほほえ)む利奈。
テーブルの向かいに座る、そんな利奈を見ながら、
信也は清原美樹の笑顔を思い浮かべていた。

「そうなんだ。二ーチェは、美樹ちゃんも好きなんだよね。
ニーチェは、まるで、現代をいかに生きるべきか?を予見したように、
『美しいものや、音楽や芸術こそが、人生を可能にする』って言っているからね。
『ツァラトゥストラ』では、『子どもの頃の明るい笑い声を取り(もど)そう』とか、
『君たちは君たちの感覚でつかんだものを、究極まで考え抜くべきだ』とか言って、 
感動できるやわらかな心と、困難をも反転させるユーモアでもって、
粘り強く、クリエイティブな人生を歩こう!って言ってるからね。
まさに、おれたちの先生って感じだよね。利奈ちゃん」

「うん。ニーチェって、わたしたちの先生って感じ!」

 利奈は、天真爛漫な笑顔で、そう言った。
                                                          
≪つづく≫ --- 96章 おわり ---

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