九話:進みゆく歯車
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なりエプロンを身につけ謝罪するシャマルにはやては朗らかに返す。
自分が騎士達の世話をすると言ったのだから手伝ってもらう必要もないのだ。
特に最近はみんながやることを見つけて忙しそうにしているのを知っているので自分が支えなければと気合が入っている。
「おはよ……」
「おはよう、みんな」
「おはようさん、ヴィータにおとん。それにしてもヴィータはえらい眠そうやなー」
「眠い……」
どちらも髪をボサボサのままにして部屋に入ってきたが特にヴィータは目を閉じればそのまま二度寝入るだろうと確信できる。
切嗣の方は身だしなみは最低と言ってもいいが目自体は冴えているようだ。
「もう、ヴィータちゃんは顔を洗ってきなさい」
「ミルク…飲んでから……」
「僕もホットミルクを貰えるかい」
シャマルにだらしないと注意されるが対して意味はない。
今にも眠りに落ちそうになりながらホットミルクを所望する。
切嗣も一緒に受け取ってソファーに座り一口すする。
「いやー、温かいね」
「……はい。本当に……温かいです」
手の平からじんわりと伝わって来る温かさは身も心も温めていく。
この温かさがあれば自分達はいくらでも戦えるとかつて心が凍りついていた騎士は目を細める。
そのすぐ隣にその暖かさを受け取れぬ様に自ら心を凍りつかせた男がいるとも知らずに。
「そう言えば今日は病院の診察の日だったね」
「ああ、それでしたら私が主に付き添わせていただきます」
「いや、今日は僕が行くよ。最近はあまり動いてないしね」
「しかし……」
「いいんだよ。君達は自分の好きなことをしてくれていれば」
笑ってヒラヒラと手を振る切嗣にシグナムは考える。
切嗣の手を煩わせてしまう事に罪悪感はある。
しかし、それ以上に蒐集を一刻も早く行わなければならない状況が背中を押した。
「……分かりました。お気遣い感謝します」
「構わないよ。石田先生にも会いたかったしね」
「なんや、おとん。石田先生のこと好きなん?」
「そういうのじゃないけど魅力的な女性だとは思ってるよ」
少しのからかいの含んだ会話をする親子を見ながら騎士達はこの家に来れて良かったと心の底から思う。
(君たちにはできるだけ蒐集に集中してもらいたいからね)
己の素顔すら忘れてしまった愚かな道化の心中を知ることもなく。
細めた目の奥に宿る残酷な理想に気づくこともなく。
騎士達は己が為すべきことを為し続けるのだ。
「うーん、やっぱりあんまり成果が出てないかな」
医師の石田はカルテを眺めながらポツリと呟き目をつぶる。
人を一人でも多く助けたいと願う根っこからの医者である石田にとってははやての現状
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