第五章
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「うちは別に警察の厄介になることしてないよ」
「親父もいるんだ」
「というかお兄ちゃん甲子園どうだったの?」
服の上からも胸が目立つはっきりした目の黒髪をロングヘアにした少女だった。
「阪神勝ったの?」
「すみれ、ちゃんと帰って来たんだな」
「だから、お兄ちゃんは甲子園に行ったけれど」
それでもとだ、俊介を兄と言う少女はこう返した。
「私達はレストランに行ってたのよ」
「そんな話聞いてないぞ、攫われたんじゃないのか」
「攫われるって?」
「悪い奴等にな」
「何言ってるのよ、私達今朝も言ったじゃない」
すみれは兄に怪訝な顔で返した。
「お兄ちゃんはこう甲子園のチケット買ったから」
「ああ、阪神勝ったぜ」
「それはよかったわね、けれどね」
「御前と親父、お袋はか」
「そうよ、三人でレストラン行ってステーキ食べて来るって言ったじゃない」
「そんなこと聞いてないぞ」
「だから昨日までに何度も話して」
すみれの言葉が呆れたものになっていた。
「それで今朝も行ったでしょ」
「そうだったか?」
「そうよ、人の話位聞きなさいよ」
「こいつは人の話を聞かないからな」
太洸は俊介の横から彼を見て呟いた。
「本当にな」
「俺の何処が人の話を聞かないんだ」
「あんた昔からそうじゃない」
今度は母親が言った。
「それでどうせ私達が家にいなくて携帯にかけても連絡つかなくてお巡りさん呼んだんでしょ」
「何で携帯に出なかったんだよ」
「由緒正しいレストランだったから電源切っていないとね」
「そんなの電動にしろよ」
着信音ではなく、というのだ。
「そうしたらよかったんだろ」
「レストランに行っている間はいいでしょ」
「すぐに済むからかよ」
「そうよ、全くあんたは」
「あの、とりあえずですね」
お巡りさんは家族同士の話になったところでこう切り出した。
「皆さんおられるのですね」
「はい、この通りです」
俊介の父が家長としてお巡りさんに答えた。
「ですから御安心下さい」
「そうですか、ではこれで」
「ご迷惑おかけしました」
「いえいえ、皆さんご無事で何よりです」
お巡りさんは俊介の父に明るい声で返した。
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