暁 〜小説投稿サイト〜
王様とさくらんぼ
第二章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「雀が近寄らなくなったのはいいことだ」
「はい、これで、ですね」
「さくらんぼは全て陛下のものですね」
「全部召し上がられますね」
「そうなりましたね」
「うん、いいことだよ」
 とても、というのです。
「雀達に食べさせてなるものか」
「さくらんぼはですね」
「陛下の果樹園にあるそれは」
「私のものだ」
 自分の持っている果樹園に実っているものだからです。
「それを雀達が食べるなぞな」
「あってはならないこと」
「だからですね」
「ここはかかしや鳴りもので寄せ付けない」
「そうされていますね」
「この通り、さくらんぼはこれから全て私のものだ」
 王家の果樹園に成るものはというのです。
「今日も明日も食べよう」
「では明日はどうされますか」
「どんなお料理にされますか」
「ケーキがいいね」
 さくらんぼのケーキをというのです。
「それにしよう」
「わかりました、ではそれを作らせてもらいます」
 シェフの中にいるパティシエの人が応えました、そしてでした。
 王様はさくらんぼを楽しみ続けました、ですがある日のことです。
 シェフの人達にです、こんなことを言われました。
「何っ、さくらんぼがない!?」
「はい、そうです」
「どの木にもです」
「さくらんぼがありません」
「一つも」
「雀は追い払った」
 まずはこのことから言う王様でした。
「そして誰か取るということもだ」
「陛下の果樹園です」
「誰が取りましょうか」
 厳重に管理されているうえに皆が慕う王様のものです、それでどうして取る人がいるのでしょうか。そんな人はプロイセンにはいませんでした。
 それで、です。王様もいぶかしんでシェフの人達に尋ねました。
「では一体誰がやったのかね」
「はい、虫です」
「毛虫達がです」
「桜の木のさくらんぼ全てです」
「食べてしまったのです」
「そういえば」
 シェフの人達の話を聞いてです、王様もはっとして気付きました。
「桜の木には多かった」
「はい、毛虫が」
「そしてその毛虫達がです」
「さくらんぼを全てです」
「食べてしまったのです」
「そうだった、そしてその毛虫達を食べるのは」 
 このことについてもです、王様は言いました。
「雀達だった」
「はい、そうでした」
「それでさくらんぼ達はです」
「一つもありません」
「わかった、ではだ」
 それならとです、王様はすぐにこう言いました。
「こうなれば仕方がない」
「仕方がない?」
「と、いいますと」
「どうされるのですか」
「かかしも鳴りものもどけるのだ」
 雀達を追い払っていたそれをというのです。
「そして雀達に毛虫達を食べてもらおう」
「そうされますか」
「しかしそうしてしまうとです」

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ