第四章
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「今日も」
「それもよい、わしは木の実等しか口にせぬからな」
「仙人様だからですか」
「別にな、それでここまで来たのはわしが本当にいるかどうか確かめる為か」
「そうなんだ、ただ」
平六が仙人の問いに答えた。
「仙人様っていつも一人なんだ」
「この山にな」
「そうなんだ、一人で」
「仙人はそうじゃ」
仙人ならばというのだ。
「山に一人で住み仙術の修行をしておるものじゃ」
「そうなんだ、一人なんだ」
「うむ、そうしておる」
「一人でも仙人様なんだね」
ここでこう言った平六だった。
「千人じゃないんだ」
「ははは、そのことを言うか」
「違うんだね」
「わしは一人じゃぞ」
仙人はそのことは笑って言うのだった。
「千人もおらんぞ」
「そうなんだね」
「言葉が違う、その千人は数じゃ」
それの千だというのだ。
「だから違う」
「そうなんだ」
「仙人の仙はまた違う字じゃ」
「そういうことなんだね」
「仙人でも一人じゃ」
また笑って言った仙人だった。
「そこはよくわかってくれることじゃ」
「そういうことだね」
「字はそれぞれで表している意味が違うのじゃよ」
「そのこといつも祖父ちゃんが言ってるね」
「だから村の寺子屋で教えてもらったことは覚えておけと言っておるのじゃ」
与平は平六に微笑んで言った。
「しっかりとな」
「そういうことなんだね」
「うむ、しっかりとな」
「さもないと仙人様のことも間違えるんだね」
「そういうことなのじゃ」
仙人はまただ、平六に笑って言った。
「わしが千人もいたら面倒じゃろ」
「面倒かな」
「わし自身がな」
そうだというのだ。
「だからじゃ」
「字のことはよくわかること」
「漢字はな。わかったな」
「うん、よくね」
「そういうことでな、さて」
ここまで話してだった、仙人は一行にあらためて言った。
「御主達腹は空いていないか」
「お腹が?」
「うむ、麓の村から頂上まで来たな」
「うん、そうだけれど」
「途中弁当を食ったにしても」
それでもというのだ。
「この高い山を登ってきたのじゃ」
「だからなんだ」
「身体を動かしてその分腹を空かしておろう」
それで、というのだ。
「何か食うか」
「食べさせてくれるの?」
「わしは木の実や果物しか口にせぬが」
「その木の実や果物をなんだ」
「食うか」
こう一行に言うのだった。
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