暁 〜小説投稿サイト〜
逢魔ヶ刻
第五章

[8]前話 [2]次話
「出たよ」
「そうなのね」
「色々とね」
「無事でよかったわ」
 運転しつつだ、母は息子に真剣な顔で答えた。
「お母さんの言った通りでしょ」
「うん、夕方から夜になる」
「まさにその時間はね」
「出るんだね」
「逢魔ヶ刻はね」
 まさにその時はというのだ。
「出るのよ」
「本当にそうだったね」
「だからお母さんずっと言ってたのよ」
「暗くなる前にだね」
「帰るべきだってね」
「僕も暗くなる前に帰ってたけれど」 
 それもとだ、達也は見たものを思い出しつつ話した。
「それでもね」
「夜になると変な人が出ると思ってでしょ」
「そう思っていたよ、かなりね」
「そうだったのね、けれどね」
「実際にあの時間は出るんだね」
「ひいお祖母ちゃん嘘を言う人じゃなかったからね」
 母にとっては祖母にあたるその人はというのだ、このことを話してくれたその人がだ。
「だから私も信じてたけれど」
「それで僕にも話してくれて」
「本当のことなのよ」
「そうなんだね、けれど」
「けれど?」
「何で逢魔ヶ刻に出るのかな」
 首を傾げさせてだ、達也は母に問うた。
「夜はわかるけれど」
「ああ、それね」
 母は息子の問いにすぐに答えた、夜の道の中を運転して進みながら。
「時間がそうなのよ」
「逢魔ヶ刻っていう時間が?」
「夕方はお昼と夜の時間にあるわよね」
「うん」
「それで逢魔ヶ刻はその夕方からまさに夜になろうとしている」
 母は達也に真剣な顔で話した。
「その時間、まさにね」
「そうした時間だから」
 それでというのだ。
「夕方はお昼と夜のはざかい、二つの世界の間にある世界で」
 昼と夜のだ。
「そしてその夕方と夜の更に間にある時間」
「そうした微妙な時間だから」
「その間にある時間だから」
「妖怪が出るんだ」
「はっきりした二つの世界の間にある世界ははっきりしていなくて」
 それでというのだ。
「そこに妖怪は出るものって言われててね」
「それで妖怪が出て来る」
「そう言われてるわ」
「何か不思議な話だね」
「そうでしょ、それで夜はね」
 今はというと。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ