第四章
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「ここは」
「そうするのね」
「それが一番いいよ」
今は、というのだ。
「止まったらそこで襲われるから」
「けれど中に入っても」
「危ないっていうんだね」
「襲われない?」
猫又達にとだ、絵里奈は達也に問うた。
「猫又達に」
「そうなるかもね、けれどね」
「止まって引き返すよりは」
「いいよ、ここは駆け抜けよう」
こう言ってだ、実際にだった。
達也は絵里奈の手を掴んだままだ、その怪しい猫達の群れの中を。
駆け抜けた、周りから不気味な声が幾つも響いたが。
それでも駆け抜けてだ、猫達の群れを突破した。
二人は危機を脱した、だが。
周りから怪しい声や姿が数えきれないだけ聞こえ見えた。それでも駆け続けて。
二人は気付いた時には駅前のコンビニの前にいた、周りはすっかり真っ暗になっていた。
そのコンビニの前でだ、達也は絵里奈に言った。
「何かね」
「うん、もう変な音や生きものもね」
「聞こえないしいないね」
「そうね」
絵里奈は肩で息をしつつ周りを見回して達也に答えた。
「どうやら」
「何だったと思う?」
少し落ち着いてだ、達也は絵里奈に尋ねた。
「一体」
「妖怪よね」
思ったものをそのままだ、絵里奈は言葉に出した。
「やっぱり」
「そうだよね、あれは」
「ええ、やっぱり妖怪っていたのね」
「そうなんだね、そういえば」
「そういえばって?」
「さっきの時間だけれど」
母に言われた言葉をだ、彼は絵里奈に言った。
「逢魔ヶ刻だったよ」
「逢魔ヶ刻?」
「そう、出る時間だったんだ」
「妖怪とかが」
「そうだったんだ」
「そんな時間に帰ったから」
「僕達見たんだよ」
そうなったというのだ。
「それで」
「そうだったのね」
「いや、本当のことだったんだ」
逢魔ヶ刻には出る、そのことがだ。
「まさかと思ったけれど」
「色々出て聞こえたわね」
「そうだね」
「正直怖かったわ」
「全くだよ」
「ええと、ここ駅前だけれど」
右手を見れば駅がある、実際に。
「私のお家と全然違う方向よ」
「僕の家ともだよ」
「どうしようかしら」
「そうだね、お母さんに車で来てもらおうかな」
「迎えに」
「そうしてもらおうかな」
もう逢魔ヶ刻ではない、だが。
それでも見たからこそ怖くてだ、こう言ったのだ。
「僕もね」
「それじゃあ」
二人でだ、携帯を出して。
それでそれぞれの親に連絡をして車でコンビニまで迎えに来てもらって家に帰った。達也は車の助手席にいたが運転している母に言った。
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