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パラソル
第六章
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「やればやる程な」
「いいですね」
「うむ、だからな」
「毎日教わってこそですね」
「そうだ、ではな」
「はい、お家に帰って」
「店のことをしよう」
 こう話してだ、美女は男の後ろについて男の子達の手を引いてそうしてだった。
 その場を後にした、パラソルは畳んで男の子の一人を引いているその手の一つに持っていた。その全てを見てだった。
 伊達は黙ってだ、文を橋の上から川にひょい、と投げ捨てた。そしてそれから遊郭に向かった。
 その次の日だ、彼は笑って学友達にことの次第を話してこう言った。
「これで終わりだよ」
「遊郭で朝まで遊んで」
「それでだね」
「そう、僕の恋愛はね」
 まさに、というのだ。
「目出度く終わったよ」
「まあある話だね」
「そうした小説でもね」
「想い人には相手がいた」
「ツルゲーネフでもあったね」
「ははは、初恋だね」
 ツルゲーネフと聞いてだ、伊達は笑って言った。
「確かにあの作品でも想い人に相手がいたね」
「それがよりによって自分の父親だった」
「そうした悲しい話だね」
「そして主人公の初恋は終わった、そして僕も想い人は人妻だった」
 伊達は笑ったまま言った。
「それがわかって僕の恋は終わったね」
「そこからは踏み込まないんだね」
「人妻でも、とは」
「生憎僕はそうしたことまではしなくてね」 
 想い人に相手がいれば、というのだ。
「そこで終わってしまうんだ」
「だからだね」
「実際にここで終わって」
「そして遊郭に行った」
「そこで朝まで楽しんだんだね」
「そうだよ」 
 まさにというのだ。
「そうしたよ」
「そうなんだね」
「じゃあね」
「君の恋話はこれで終わり」
「そうなったんだね」
「うん、ただね」
 ここでだ、伊達はこんなことも言った。
「楽しくて甘いけれど」
「それでもと」
「そう言うんだね」
「終わりは切ないね。そして悲しいね」
 言ったのはこうしたことだった。
「どうにもね」
「まあね」
「恋愛ってのはそういうものみたいだね」
「甘くて楽しいけれどね」
「その終わりはね」
 失恋、その時はというのだった。学友達も。
「悲しくて切ない」
「そういうものだね」
「そうだね、そのこともわかったよ」
 伊達は今は悲しげに、自分でもはじめてそうなっているとわかるその微笑みで言った。
「彼女が人妻だってわかった時どうしても切なくてね」
「それでその足に遊郭に行ってだね」
「朝まで遊んでいたんだね」
「女色と酒でね、それで吹っ切ったよ」
 彼女のことを忘れたというのだ。
「また今日から遊ぶよ」
「それじゃあ恋愛は」
「そっちはどうするのかな」
「さあ。正直切ない思いをしたし」
 その失恋でだ。

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