第一章
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ある筈がないが
ベルゼブブは巨大な蠅の姿をしている。羽根には髑髏と骨の模様も入っている。魔界の魔神の中でも大公の一人だ。
その力は強大であり腐敗を何よりも愛している。そのベルゼブブは近頃人間の世界のローマに人間の姿でよくいた。
その彼にだ、彼に使える悪魔達が問うた。
「またどうして」
「近頃ローマによく行かれているのですか」
「人の世でも」
「入り浸っておられますが」
「何故ですか?」
「何故ローマなのですか?」
「実にいい街だからだ」
ベルゼブブは丁渡そのローマから戻って来たばかりだった。黒い身体にぴっしりとしたシャツと同じ色のズボン、それに靴とマント頭には幅の広い白い羽根の付いたやはり黒い帽子を被っている。マントは紅で黒髪に黒い目、髭のない細面の美男子の姿だ。
その彼がだ、家臣達に笑って答えた。
「実にな」
「ローマがですか」
「旦那様にとってそこまで、ですか」
「いい街なのですか」
「そうだ、私にとって最高の街だ」
満足している微笑みでの言葉だった。
「あそこまでいい街ではない」
「しかしローマは」
「あの街は」
家臣達はいぶかしんで主に答えた。
「ローマ教皇の場所ですが」
「教会の総本山です」
「まさに神がいる場所ですが」
「そうした街なのですが」
「そう思うか」
ここではだ、ベルゼブブはにやりと笑ってみせた。笑みが変わった。
「そなた達は」
「と、いいますと」
「それは一体」
「わからぬか。そういえばだ」
ここでだ、ベルゼブブは彼等を見て気付いて言った。
「そなた達はまだローマに行ったことはないか」
「はい、他の街には行ったことがありますが」
「ローマはありません」
「一度も」
「そうだったな、ではいい機会だ」
ベルゼブブは今度は楽しげな笑みで彼等に言った。
「そなた達も私が今度ローマに行く時にだ」
「私達もですか」
「ローマにですか」
「お供として」
「来るといい」
こう言うのだった。
「是非な」
「わかりました、それでは」
「旦那様が今度ローマに行かれた時に」
「お供させて頂きます」
「そうさせて頂きます」
「その様にな」
ベルゼブブも笑顔で応えた、そしてだった。
彼は本来の巨大な蠅の姿に戻って自身の宮殿の中でくつろいた。様々な形に捻れている極彩色の宮殿の中で。
そしてこの時から暫くしてだ、彼は言った。
「では行こう」
「ローマにですか」
「旦那様が先日言われていた」
「あの街にですか」
「これよりですか」
「うむ、行こう」
こう言うのだった。
「いいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
「今よりですね」
「あの街に」
「供をせよ」
こう
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