第十一話
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の悲痛な叫びが聞こえてくる。
数十秒で、男の叫びは聞こえなくなった。
小さな山からは血の臭いが漂ってくる、レミリアにとっては食料の臭いなのだが、虫の集まった山から漂って来ているため、顔をしかめつつ、その山を睨みつけた。
虫はすぐに飛び立った。
空を覆う虫の群れの中へ戻っていき、群れの中へ紛れてどれがどれなのか、レミリアには既に分からなくなっていた。
目の前に広がる肉片。
さっきまでレミリアと死闘を繰り広げた男だった物。
突如現れた虫に呆気なく食い殺された者の末路だ。
レミリアは空を………虫を見上げて警戒を強めた。
虫は男を殺したとはいえ、彼女の味方だと言う保証は無いからだ。
次の瞬間にも、彼女へ襲いかかる可能性もある。
油断なく虫を見据えていると───突然、群れが二つに“割れた”
虫の隙間から空が見える。そして、小さな───目を見張らないと見えない位小さな『人影』がレミリアの瞳には写った。
そして、その人影が一瞬光った───刹那。
レミリアの左肩を光が貫いた。
「あっ…………がぁぁぁぁぁぁ!!?」
レミリアは突如訪れた激痛。そして、感覚と“重さ”の感じられない左腕。
解っては居るが解りたくない『逃避』
今まで体験した事の無い『痛み』『恐怖』
そして、何も感じない『喪失感』
レミリアはゆっくりと左手を見る。
『無』
何も無い。有るはずの、さっきまで有ったはずの腕が見当たらない。
「あ、ああ……あ、ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
レミリアは声を荒らげる。
突然あったものが無くなる喪失感。それは、初め、月華が体験した事である。
とてつもない気持ち悪さ、体験した事の無い痛み、それらがレミリアの精神を蝕む。
人影が降りてくる。だが、錯乱したレミリアにそれを気にする余裕など無い。
『痛い』『辛い』『気持ち悪い』レミリアの頭の中をそれが埋め尽くす。彼女はまともな思考が出来ないでいた。
「ああ……あああ……」
「……何だ、吸血鬼。貴様、まともに戦った事も無いのか?吸血鬼には強力な再生能力が有るくせに………。まぁ、あの光は聖なる光、吸血鬼には効果絶大だろう。暫く貴様の再生能力は当てにならんだろう」
今度こそ、レミリアの思考が完全に止まりかけた。
その声音に聞き覚えが有ったから、ついさっきまで殺し合い、そして、目の前で食われて死んだ筈の者の声。
レミリアは視点の定まらない瞳で声の主を見上げる──
───それはついさっき、虫に食われて死んだ筈の男だった。
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