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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十六話  深謀遠慮
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の距離に自由惑星同盟軍七個艦隊が勢揃いしている。明日には肉眼で見る事が出来るだろう。まあ願ったり叶ったりだな。俺が恐れたのはヤン、カールセンとの戦闘中にビュコックが登場する事だった。それを避けられたんだから予定通りだ。油断はしていない。同盟軍に対しては常時偵察隊が接触を保っている。今の所同盟軍におかしな動きは無い。向こうもこちらに向かって来ている。

艦橋は緊張している。ワルトハイム、シューマッハ、抑えようとしているが興奮を抑えられずにいる。俺は戦うつもりは無いと言ったんだがな、目の前に敵を見るとそうもいかない様だ。特に今回は目の前にいるのが敵の主力だ、そして決死の覚悟で挑んでくるだろうという事も分かっている。興奮するなと言うのが無理なんだろう。落ち着いているのはヴァレリーとリューネブルクぐらいのものだ。

俺の艦隊でさえこうなんだ、ビッテンフェルト、レンネンカンプ、ケンプ、彼らの艦隊ではもっと興奮しているだろう。もしかするとミュラーの艦隊も興奮しているかもしれない。スクリーンに映った敵艦隊を見て涎でも垂らしているかもしれん。もう一度全艦隊に注意をしておいた方が良いかもしれんな。

「ワルトハイム参謀長」
「はっ」
「全艦隊に通信を。無暗に戦端を開くな、総司令部の指示に従うようにと」
「はっ」
ワルトハイムがバツの悪そうな表情をした。やっぱりな、ワルトハイムは戦いたいと思ったんだろう。残念だがそれは許さん、戦わなくても勝てる状況に有るんだ。無駄な損害を出す事は無い。それに俺はあの連中と戦いたくない。能力面で危険な男達だし感情的には結構好きな連中だ。

ワルトハイムがオペレータに指示を出すとオペレータが不思議そうな表情をしたが直ぐにちょっと気の抜けたような表情に変わった。戦わずに済むかもと思ったようだ。
「平文で打ってください」
俺が言うとワルトハイムが“宜しいのですか?”と問い掛けてきたが頷く事で答えた。

不思議か? 敵は当然こちらの通信を傍受する筈だ。戦意が乏しい、まともに戦うか怪しいと判断するだろう。さて、同盟軍は如何するかな? 遮二無二戦闘を仕掛けて来るか、それとも俺達を放置してメルカッツの艦隊を迎え撃つためにハイネセン方面に向かうか……。敵を迷わせるだけでもこちらが優位だ。ビュコックは如何するだろう? 俺ならハイネセンに戻るが……。リューネブルクがニヤッと笑うのが視界に入った。性格悪いぞ、お前。上司の心を読まないのも困るが読み過ぎるのも問題だ。



宇宙暦 799年 4月 12日  同盟軍総旗艦リオ・グランデ  ドワイト・グリーンヒル



「総参謀長、帝国軍は時間稼ぎをするつもりの様だ」
「はい」
オペレータが帝国軍の通信を傍受した。内容を聞いたビュコック司令長官の表情は渋い。予測された事だが
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