月下に咲く薔薇 17.
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ちらに来ている間だけ、彼は向こうで眠っています』
「あー。言っている事はわからないが、何とか同じ言葉は通じそうだな」
『それも今だけです。彼とあのロボットが、私達を繋いでくれていますから。ああ、彼女を守ったのは正解でした。こちらで力になってくれる能力者。彼は目障りに感じていますが、きっとこの方がいいのです。彼のやり方では、全てを壊してしまうだけでしょうから』
「俺達はさっき、仲間を2人連れて行かれた。あんたの言う彼の仕業、と俺は見ている。いきなりで悪いが、あの異世界に行く方法について詳しく聞かせてくれ」
声は、一度沈黙した。
そして先程よりも小さな声で、『今は無理です』と萎れた答えが返ってくる。『彼が、もう眠りたいと言っています』
また「彼」かと、クロウは眉を寄せた。どうやらアムロの事ではなさそうだが、過激そうな仲間が「彼」なら彼女の言う眠りたい誰かも「彼」呼びにする。
「もしかしてニルヴァーシュの事か?」
『にる……?』
女性の声は、機体名を繰り返そうとすると何故かそこで消えてしまった。
「ああ、俺が触っているロボットの事だ」
『ええ、そうです』
「さっき誰かを止めてくれと言っていたが、正直なところ、俺の中にも何かを入れられて機嫌の方は最低ランクだ。いきなり自分本位な依頼をされても、即答はできない。そういうもんだろ? 相手の気持ちってのは大切にしようぜ」
『…では、印を残してゆきましょう』
「印?」
『使い方は、いずれわ…りま…』
返答する声が、急激に遠のいてゆく。会話の継続が難しくなってきたとクロウは悟った。
咄嗟に、「頼む! これは答えて帰ってくれ!」と無理矢理ねじ込みにかかる。「俺とニルヴァーシュの中にあるのは、種か何かか? 芽が出る条件って何だ?」
『芽は…』
「深刻な問題だろ!? 朝、飯を食ってる時に、仲間の前で俺の鼻や口から枝葉が出てくりゃ大騒動だ!!」
『ふっ…!』
女性が笑った。少なくとも、クロウにはそのように感じられた。
後に続くのは、あの心地よい響きの音だ。決まり事から成る音の羅列には聞こえないのに、弾ける音楽は連なりとしても耳に良い。
喜びのようなものをクロウに伝え、声はそれを最後に全く聞こえなくなった。
消えてゆく星々と宇宙の代わりに、硬質な艦内の壁面がクロウの視界に蘇ってくる。どうやら、繋がりとかいうものは断たれたらしい。
νガンダムから発せられる光の粒も、いつの間にやら消滅していた。
図らずも、最後に行ったクロウとのやりとりは彼女を爆笑の余韻と共に帰した事になる。
「…笑い事じゃないだろ、当事者にとっては」
赤面し愚痴りはするが、彼女の様子から種ではないとの結論に至った。取り敢えず、その1点だけは信じておく事にする。
遠巻きにしていたロックオン
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