月下に咲く薔薇 17.
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首肯する。
件のニルヴァーシュは、極めて特殊な機体だ。レントン達が既に何かを察知しているというのなら、今夜のうちに彼等と会う事ができれば話は早い。
ロックオンが、受話器を手にしたまま振り返った。
「クロウ。レントンとエウレカは、今もダイグレンの格納庫だ。ニルヴァーシュに何かあったらしい」
「行くか! ダイグレンに」
敢えて、左手で軽くドアを指す。何故かティファが、握ったまま右手を離さなかったからだ。
「ん? どうした? ティファちゃん」
クロウが見下ろす傍で、ガロードも「何か感じるのか?」と少女の顔ではなく右手に視線を落とす。クロウの右手に重ねられた小さな白い手を、やや複雑な表情で。
少女が、今度は首を横に振った。
「ダメ。聞こえない」
「じゃあ」ガロードがティファの手を毟り取ると、握ったままドアを顎でしゃくる。「先に行ってるぜ! 後から必ず来いよ!」
少女を連れ出す少年が、疾風のように部屋から消えた。
行くのは別に構わないとして、ややぞんざいとも映るガロードの態度に、クロウは首を捻る。何か気に障る事でもやってしまったのだろうか。
「ちょっと絵になってたからな。恋する少年には、それが面白くなかったんだろう」
隻眼の親友が、片目と口でクロウを冷やかした。
「よせよ。医者と患者の関係みたいなもんじゃないか」
「理屈じゃないんだよ。理屈じゃ」
クロウに軍用コートを差し出すロックオンから、一瞬だけ笑みが消えた。
理屈ではない、か。それはクロウにも言える話だ。
自重すべきと理解をしても、異物の存在を知ったからには睡眠を投げ出してでもその正体に迫りたくなる。
ましてや、大人達が無理矢理ベッドに入っている深夜、子供が愛機の件で格納庫から出られないというのも不憫な話だ。レントン達とティファ達には、然るべき大人の付き添いが必要に決まっている。
人影の見える滑走路を横に見ながら、再び夜空の下に身を躍らせて外を走る。
このバトルキャンプで必死な一夜を過ごしている人間は、クロウ達の他にもいた。外で働く人影は、揃って前屈みになったり跪いたりと不自然に姿勢を低くしている。
先程の戦闘の跡が残る一角で、クラッシャー隊隊員とジロン達が照明を頼りに窪みの中に目を凝らしているではないか。目当てはおそらく、アリエティスが切断した敵の一部だ。
次元獣の能力を持っている植物片。当然放置は危険だし、基地内への収容にも大きなリスクを伴う。或いは、せめて発見場所の特定だけでも進めておきたいとの判断が、深夜の破片探しという難儀な作業に働いているのかもしれない。
「何か見つかれば儲けものだな」と、クロウは独りごちた。一心不乱の仲間達に背を向け、ロックオンと共にダイグレンに乗り込む。
ホランド達が月光号ごと離反して以来、ニルヴ
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