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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 17.
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が、「お疲れさん」と労いながらクロウに近づき肩を叩いてくれた。
 レントンとエウレカには、リーロンがコクピットから下りるよう声を張り上げている。
 何か得るものでもあったのか、今度は「はい」と素直に返事をしレントンはエウレカと共に機外に下りた。
 少年達の姿を見て、思い出す。そういえば女性の声と会話している間、ニルヴァーシュとレントン達の思考は余り多くクロウの中に流れ込んでは来なかった。今日のアムロの使い方だと、より深く繋がりたいと願っている者のコミュニケーションを仲立ちするだけなのかもしれない。
 その方が良かった。古代の軍師でもあるまいに、2組の成す全く別な会話を同時にこなせる程、レントンもクロウも思考と体力の余裕がない。何しろ、戦闘後と夜更かしの組み合わせを抱え込んでいるのだから。
 向こうの会話も気にはなるが、まずロックオンに「今の、お前にも聞こえたか?」と人差し指で金粉の散布を指で円状に描く。
「ま、まぁな」口を妙な形に歪めつつ、ガンダムマイスターが曖昧に答えた。「お前の言ってる事だけは少し聞き取ったぜ。特に最後のやつ。…鼻や口から、何だって?」
 にっと白い歯列を見せ馬鹿にするロックオンに、慌ててクロウは掴みかかる。
「そこだけ聞いてたのか? おい…、ちょっと。それはないだろ!? 忘れてくれ!! すぐに!!」
 しかも、突き刺さる視線に振り返れば、瞬時に顔を背けたガロードとリーロンが堪えきれずに肩を震わせている。
「…今度やる時には、是非とも耳栓付きにしてもらいたいぜ」
「それって意味ないよ。声じゃないんだから」と、ガロードが先にティファと顔を見合わせてからこちらを向いた。
「まぁまぁ。レントンとお前の体験談は明日聞くとして…」
 ロックオンが何かを言いかけ、顔を強ばらせる。
「何だ? あれは」
 突然、ティファの足下が明るくなった。
「ティファーッ!!」
 ガロードが、少女の手を引き咄嗟にその場から飛び退く。
 それでも同じ場所は、ぼんやりと光り続けていた。
 ガロードの絶叫に驚いたのか、機体の修理を手伝っていた雅人達も集まってくる。
 身構えたレントンが強く握るのは、エウレカの小さな手だ。
 直前までティファの立っていた場所を、人の輪が囲む。
 その輪の中心に、歪な青白い光の盆が出来上がった。
 直径は、およそ5センチ。スポットライトの産物か反射の悪戯と受け止めたいところだが、生憎それを証明する光源は格納庫に1つも存在しない。
「ただ光ってるだけか」獣戦機隊の雅人が膝を突き、しげしげと覗き込みつつ光の盆の端を指でなぞった。「何だか月みたいだな。ほら、ここに兎がいる」
 雅人の言う兎とは、月の表面に人の目が見つける濃淡の悪戯だ。確かに、兎と見えなくもない。
「そういえば」と、レントンが顔を上げ
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