月下に咲く薔薇 17.
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いとしたら、その後だ」
「まともに頭が回るようになった頃から、か」
たとえ大洋に日本が2つあろうと、ZEUTHとZEXISそれぞれの言う地球が異なっていようと、日本人の気質というものが別物という事はない。竜馬とタケル、葵達や扇達、勝平やキラケンには、全く同じものが秘められている。
一方で戦闘民族ゼントラーディは、昼からの疲労を克服できる程、高揚する感情の塊で肉体を支配する事に長けていた。それだけに、行動を縛られると行き場のない感情の暴走や反転に激しく翻弄されてしまう。ゼントラーディの多くは、突き上げる感情の奔流を溜める場所を持っていないのだ。
日本人とゼントラーディ。悲しみの受け止め方が、両者では大きく異なる。抱いているものは全く同じで、どちらの悲しみがより大きいという話でもない。ただ、悪戯に時間をかければ、日本人であれゼントラーディであれ、誰かの負担が限界を超えてしまう危険性は極めて高かった。
「…今夜は眠れないな」
ぽそりと呟くロックオンに、クロウと横沢が小さく相槌を打った。
出撃中に失った水分を補給し、時間をずらしてこっそりシャワーを浴びる。上からの指示なのでまずベッドに体を預け、床に転がるハロを意識しながら目を閉じた。
もし。あの落下感が再び訪れれば、クランや中原の囚われている場所に行く事ができるのだろうか。そんな思考に傾きかけ、クロウは焦っている自分に気づく。
あの場所はまともではない。生身のまま自分を取り囲む異常な世界の見え方を知り、身を守る術を持たない中で仲間の救助を待つ事になるのだ。2人の心中など、推し量らずとも手に取るようにわかる。
「…なぁ、ロックオン」
「休んでおけ、クロウ」
会話を拒絶されるも、クロウは話し続ける事にした。月光はカーテンにより遮断され、ベッド下のルーム・ランプがぼんやりと狭い室内を照らしている。
「今のZEXISに余力があると思うか?」
ロックオンは無言だった。
「ソーラーアクエリオンの壱発逆転拳を吸収するような化け物が現れて、隊の女の子が2人も連れて行かれた。インペリウムだけでも厄介な俺達が、別の敵に食いつかれたんだ。出し惜しみしている場合じゃないって考えるのが普通だろ?」
「…それでお前は、あの嘘つき野郎と組みたいのか」
今度は、クロウが返事に窮した。
一瞬だけ目の合ったミシェルのメサイアを、ふと思い出す。
「確かに、今朝からの騒動には全部別の犯人がいた。アイムもそいつに狙われる側だったし、奴は何かを知っているんだろう。だから行くのか? 利用されるつもりで」
「何とか命までは取られないようにするさ。ブラスタもな」
ロックオンが、一拍置く。
「はぁ〜。だから、お前は借金をこさえるんだ。とにかく寝ろ。いいから寝ろ。断固、絶対、何かを考えたくなっても寝ろ
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