月下に咲く薔薇 17.
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出撃した各機が母艦やバトルキャンプに帰還した後、各艦の艦長とロジャー、万丈、大塚、ゼロ達が、城田や21世紀警備保障の大杉と共に一室に籠もった。
非常に後味の悪い形での戦闘終了だ。パイロット達にも思うところは様々あるが、元々昼のライノダモン騒動に加え、基地内の見回りからバトルキャンプ防衛に移行し、皆が寝ずの対応をした。
当然疲労はピークに達しており、エネルギーを持て余していたシンやエイジ達の表情は精彩を欠いている。足取りの重さも手伝って、着替えに行く彼等はヘルメットの端を握ったまま泥中を歩いているかのような有様だ。
クロウの背後から、ロックオンがついてくる。
その2人を、21世紀警備保障の横沢課長補佐が呼び止めた。
「お疲れ様」足早に近づくと、「まずはゆっくりと休んでくれ」と自室に直行するよう勧める。「みんな、クロウが背負い込むんじゃないかって心配しているんだ」
「その心配は、正直俺にもある」ロックオンも同調し、愛用のハロを抱え直した。「ま、バカな考えを起こさないよう、俺達がつきっきりで見張っておくさ」
「達」の響きから、クロウは自分に纏わり付く監視の目が増えた事を悟った。ソレスタルビーイングの隻眼スナイパーは、今回デュナメスから持ち出したサブ・パイロットのハロを相部屋に持ち込むつもりでいる。
ハロは、人の頭程もある球形の自律型ロボットだ。トレミーに多数搭載され、艦の補修などを一通りこなす。少ない語彙で人間とコミュニケーションする事もでき、会話中には小さな2つの点目が規則正しく点滅する。
ロックオンがデュナメスのサポート用に使用しているハロはオレンジ色と鮮やかで、艦の修理時には他のハロを率いたりもする優れものだ。
寝ずの番が可能なおしゃべりロボットの増援。もし、クロウが独りで部屋を抜け出そうものなら、ハロは最大音量でロックオンを叩き起こすのだろう。
「頼むよ」ロックオンとハロの両方に笑いかけた後、横沢の目つきが真剣なものに変わった。「SMSもうちの社の人間も、みんな理屈では飲み込んでいるんだ。今は一度冷静になるべきだ、って。ただ、ネネさんとララミアさんにとっては、ピクシー小隊の問題という側面が大きい。さっき、ジェフリー艦長とオズマ少佐に食ってかかっていた」
「そっか…。辛いところだな。誰にとっても」
ロックオンがそう答えている間、クロウは横沢の様子に注視した。彼もまた、連れ去られた中原の上司にあたる。卑劣な敵の一手に、何も感じていない筈はないのだ。
「なら、そっちはどうなんだ?」
敢えて直球で問いかけてみる。
「勿論、うちの社にも動揺は広がってる。赤木達の間にも」横沢が、管理職でありながら皆の心中を素直に吐露した。「ただ今は、積み重なった疲労の方が大きい。僕達は夜からだけど、君達は午前中から動いてる訳だし。怖
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