第三十七話
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……ただ普通に立っていただけなら良かった。
半分寝惚けて明かりを点したその人とバッチリ目が合い、互いに何も言葉に出来ないでいる。
刀傷と思われる傷で塞がった左目に、逞しい筋肉質の白い身体。
寝る時は何も着ない主義なのか、彼は今一糸纏わぬ姿で立っている。
いやぁ……地毛が黒以外の人の下の毛って、どうなってんのかって疑問だったんだけど……
へぇ、なるほどねぇ……。
「ぎっ……ぎゃああああああ!!!!」
突然悲鳴を上げたのは男の方、前と後ろを手で隠しながら前屈みで寝台に移動する姿がとんでもなく間抜けだ。
忍も顔負けってくらいに掛布を素早く腰に巻きつけて、動揺したように私に向き直った。
「なっ……ななななな」
「何でここにいるのか?」
必死に頷く男は顔を真っ赤にしている。
「北に行く船に乗るはずだったのに間違ってこの船に乗ってしまって、
船員さんに密航者だのアニキの首を摂りに来ただの言われて追い回されて、
とりあえずやり過ごそうと逃げ込んだ先がここだった……ってわけで」
……ってか、普通女の方がこういう場合悲鳴上げるよねぇ?
何であの人が悲鳴上げんの。まぁ、据え膳食わぬは〜で来られても非常に困るんだけどもさ。
もしかして、あの人ってこういう状況に慣れてない?
海賊って女攫ってきて手篭めにするもんだと思ってたけど、この様子を見る限りじゃ偏見なのかも。
「じゃっ、じゃあ、アンタはうっかりこの船に乗っちまったってわけか」
必死に取り繕うとしている男の様子が可笑しかったけれど、でも笑う気分にはなれない。
だって一歩間違ったら殺されちゃうもん、今の状況。
こうしてのんびりと話をしているって方がおかしいけどもさ。
「一刻も早く船に乗らなきゃならないって状況だったから……ところで聞いてもいい?
ここってやっぱり海賊の船なわけ?」
「お? おうよ。ここは海賊の船よ」
ああ……やっぱり間違ったんだ……。どうしよう、本当。
「……どうしよう……このままなら簀巻きにされて海に投げ込まれるか、
アニキって人に首刎ねられるか、手篭めにされて殺されるかの三択だよ……」
「……おいおい、随分な三択じゃねぇか。つか、“アニキ”が一番偉いってのは分かってんのか?」
「海賊さん達の話聞いてると、アニキが船長ってのは予測がつくかな。
でも、アニキってフレンドリーに呼ばせてる船長って、どんな人なのかは全然……
部下を力でねじ伏せるような大将でないのは想像つくけど」
何となく目の前の男が嬉しそうな顔をしているのが気になる。
つか、何でアンタが嬉しそうな顔してんのよ。そんなセクハラな格好して。
「……というか、服着たら? 風邪引く
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