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竜のもうひとつの瞳
第三十七話
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度胸してんじゃねぇか!!」

 「へっ? か、海賊?」

 「しらばっくれるんじゃねぇ!! アニキの首でも摂りに来たんじゃねぇのか!?」

 一体何のことなのよ。そのアニキって何。

 てか、武器持ってわらわら寄って来るって何なのぉ〜!? 私、悪いことした!?

 「簀巻きにして海に叩き込め!!」

 「いや、アニキの前で首を切れ!!」

 「とにかく捕まえろ!!」

 狭い船内にむさ苦しい男達がどっと私を捕らえようと押し寄せてくる。すかさず重力でぺちゃんこに……しようかと思ったけど止めた。
ここは船の中、重力なんか無闇にかけたら下手をすれば沈没させちゃう。
かといって刀振り回すには狭すぎるし……ええい、仕方が無い。

 襲い掛かってくる連中を全員浮かしてやり、戸惑っている隙に間をすり抜けてどうにか船員から逃げ出した。
しかし、どうやってもこのまま逃げ続けるわけにもいかないし……見つかったら何をされることか。

 「何処行った!」

 「こっちか!?」

 ひぇえええ〜、見つかったら何されるか本当にわかんないよぉ〜。

 とりあえず身を隠そう。身を隠してとりあえず落ち着こう。話はそれからだ。

 適当に一室に飛び込んでドアを閉める。鍵がかけられそうだったから、とりあえず鍵も掛けておいた。
しばらくはこれで時間稼ぎにはなるだろう。

 ……しかし、どうしてこんなことに。

 船に乗ったら密航者だと騒がれて、追い掛け回される始末。
何か分からないけど、アニキってのが偉い人だってのは何となく理解したけどもさ、
それの首獲って私に何のメリットがあるってのよ。しかも海賊って何〜?
確かに海賊っぽいルックスのお兄さん達がたくさんいたけどもさぁ、本当何の冗談だってのよ。

 なんてそこまで考えて、ようやく頭が冷静になって来たのか、やっと一つの可能性にぶつかった。

 「……乗る船、間違えた?」

 考えてみたらお金を払ったのは船着場の小屋の一角だし、奥州行きの船だって教えてもらったのも焦ってたから話半分だったし。

 そりゃ、密航者とか言われても仕方が無いかぁ〜……って、そんな和やかに考えてる場合じゃないよぉ〜……
どうしよう、これから……。このままじゃ連中にとっ捕まって何をされることか。

 「……んぁ〜? 誰かいんのかぁ〜?」

 完全に寝惚けたような声で誰かが私に問いかけてくる。
……いや、こっちが聞きたい。誰かいるの?

 部屋が暗くてよく分からないのだけれども、何かがこっちに近づいてきているような気配がある。
一体だれなの、なんて考えていたところで突然部屋が明るくなり、
そこには色白で白髪の日本人にしては彫りの深い顔をした若い男が立っていた。


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