第五十八話
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「愚かな奴。どうせお前は亜須葉が来ると思って逃げるんでしょ? お前の今のあまりにも不格好な姿を見られたくないからよね。気持ち悪いブサイク。そのスケベ根性だけはシュウ以上にタフだって褒めてあげるわ。全く、何を色気づいているの、フルチンお漏らし男が」
漆多の顔から血の気が引いていくのがハッキリと分かった。完全に切れかかっている。
「て、てめえ」
慌てて俺は王女と漆多の間に入る。
それを見て、冷静になったのか。バイクから降りようとするのをやめた。
「まあいい。ガキの言うことに腹を立てても仕方がないからな」
必死に自分に言い聞かせているようだ。大きく深呼吸をする。
「月人、もうお前は親友でも何でもない。俺にとっては寧々の仇だ。彼女を見殺しにした卑怯者の男でしかない。絶対に許しはしない。必ず報いを受けてもらうからな。どんな手を使っても俺は復讐をしてやる」
その眼にはあまりにもどす黒く深い憎しみが宿っていて俺は寒気を感じてしまった。
「口先だけの男はさっさと消えなさいよ。早くしないと亜須葉が来るわよ。ケツを掘られた変態ブサイクを見たらあの子はどう感じるんでしょうね」
また王女が横から出てきて挑発する。
「やめろって、姫」
「やめないわよ。この卑怯者は相手がお前だからこんなに偉そうに言ってるのがわからないの。何が許さないよ? シュウは命がけでお前を護った。寧々だって必死で護ろうとしたのよ。なのになんで逆恨みするの? 感謝こそしても恨んだり憎んだりするなんてあり得ないでしょう? お前は自分の怒りのもって行き先が無いからシュウにその矛先を向けているだけ。シュウなら怒らないし反撃しないって知っているから。さっきの馬鹿連中や化け物に向かっていったってやられるだけだからね。お前こそ本当の卑怯者でしかない。本当に闘うべき者からは逃げ、しっぽを振り、助けてくれた護ってくれたシュウを敵に見立てて自分を満足させているくそったれの卑怯者のマスターベーション包茎早漏チキン童貞野郎だわ」
言い終わると笑い出した。
王女ほどの美少女があり得ないほど汚い言葉で罵り嘲笑するとどれほどのダメージを相手に与えるんだろう?
完全にこれはぶち切れたか。
俺は慌てて漆多を見た。
顔が本当にどす黒くなっている。全身を振るわせ、歯を食いしばり、ぎょろつくほど見開いた目で王女を睨み付ける。今にも飛びかかりそうな勢いだ。
少し身構える。万一に備えて。
漆多の全身にみなぎった力が不意に抜けていくのが分かった。
軽く息を吐くと、ニヤリと笑った。
「ふふん。もういいよ。子供相手に怒るなんて大人げないからな」
急に悟りきったような口調で話す。
王女はあまりにも急激な漆多の変化に拍子抜けしている。
アクセルを数回ふかす。
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