第五十七話
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ては少し怖い部分がある。あれは本能でありもしかすると制御できないのかもしれない、という恐怖が。恐怖といいながらそれを求めている感情が今でも存在することに気づき、薄ら寒くなる。
でも大丈夫。俺は自分に言い聞かせる。
あのとき、暴走を許可したのは、蛭町が王女を、紫音を、妹をなぶり殺しにしてやるって言ったからだ。あれがスイッチになった。俺は満身創痍で、死に直面していた。自分の命がつきようとしていて、もう起死回生の妙案など全くなかった。その時に奴の誘いがあったんだ。このまま自分が死に、王女たちがあの化け物に寧々と同じように嬲りものにされた上に殺されると思った時、もはや倫理や正義などどうでもよくなっていたんだ。もう誰も寧々のような目に遭わせたくない。目の前で大好きな者が殺されるところなど見たくない。自分が地獄道に墜ちようが護ってみせる。その思いだけだったんだ。
「だから、俺は強くなる。もっと強くなる。そんな状態に陥らないように。だから大丈夫だ……」
俺は自分に言い聞かせるように呟いた。
その声は届いただろうか?
王女は相変わらず何か物思いに耽っていたが、やがて立ち上がった。
「ここでこれ以上考えても結論は出ない。帰るぞ」
もう立ち直ったのか、単に切り替えただけなのかはわからないけど、彼女の顔には笑顔が、生意気そうな笑顔が戻っていた。
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