第五十七話
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さあ、とっととこんな辛気くさい場所からは撤収して、家に帰ろう。……そうだ、なんか美味いもんおごってやるからさ」
そうやっていくつもの励ましの言葉をつなぎ合わせ、なんとか彼女の関心を惹こうとする。
でも、王女はずっとうつむいたままで何か思いに耽っている。
「俺じゃあ駄目なのかい? 姫の敵と戦っても勝ち目がないっていうのか? 確かに単なる先兵でしかない寄生根相手でこのありさまだからちょっと不安かもしれないけど、なんとかなると思うぜ。そうそう、特訓すれば必ず俺は強くなる。間違いない。だからちょっとは安心してくれよ」
弱気になられると調子が狂ってしまう。いつもどおりの偉そうで生意気なチビに戻ってもらわないと。
「お前の力がどれほどのものかは、私にも図りかねるわ。確かに、私の僕になり力を与えられた者とは比較にならない力を出しているように思う。だけど、自身でも制御できないような状態になる者と共闘なんてできると思える? 今でもお前は僕でありながら、私の制御の及ばないところがある。こんなこと今まであり得なかった。私の力が衰えているのが原因だとは思うけど、これは大変な問題なの。もし、何かあった時に私を攻撃しないっていう保証はある? ……無いでしょう。だったら私はお前の暴走を力づくで押さえ込むくらいの力が必要だわ。だけど、そんな力は今の私には無い……」
確かに、あの妙な声の奴に俺は乗っ取られていた。それについて何故かそう強く拒むこともしなかった。理由なんてまったくわからないけど、まあそれでいいやなんて思っていた。自分の意志で自分を動かせないなんてあり得ないことだ。しかも異世界からの化け物と闘わなければならないのに、コントロールの効かない恐れのある武器を用いようとは思わないな。いつ暴走するか分からないんだから。
「大丈夫、大丈夫だと思うよ。たぶん。絶対にそんなことはさせないから」
確信はないけど、必ず出来ると思う。守りたいものを自ら壊すなんてことは絶対しない自信がある。暴走したのは奴らが敵であったし、同情の余地のない悪党だったから殺すことにそれほど抵抗を感じていなかったからなんだ。そうでなければきっと抵抗する。殺してやるとまでは思っていなかったけど、まああいつらなら死んでもいいやって思っていたのは間違いない。そこにつけ込まれただけなんだ。俺の中では奴らに対する怒りと嫌悪しかなかったんだから。そしてなんとしても王女を護らなければならないという義務感。
人喰らいについては、よく分からないけれど。そこは本能的な部分だったのかもしれない。嫌悪感を感じながらもそれ以上の恍惚感を感じていたし、さらに欲してしまっていた。あの感情はどこから来たのか? 俺を乗っ取った奴のものなんだろうか? それとも俺の心の奥底に潜んでいたものなんだろうか。
そこだけについ
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