第五十七話
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出さなかった。
王女が肩で息をしていることのほうが気になったんだ。
「姫、大丈夫か? なんか辛そうだぞ」
「何を言っているのか、意味が分からないな。シュウ、お前こそおかしいわよ」
そういって俺から離れようとするた、何かに躓いて転びそうになる。
俺は漆多を担いだままでも素早く動き、王女の腕を掴んだ。
「大丈夫か! 」
声をかける俺。近くで見る王女の顔は少し青ざめ、額には汗をかいていた。呼吸もかなり荒くなっている。
「やれやれだ……。この程度でこんなに疲れてしまうなんて。まさかここまで力が落ちているなんて思わなかったわ……」
誰に言うでもなく王女が呟く。その声には失望の色が濃かった。
「すごい汗じゃないか。それに顔色も悪いぞ。すこし休んだほうがいいな」
そういうとそのまま王女も担ぎ上げた。
「おい、何をする」
王女が騒ぐが、体調が相当悪いらしく、あまり抵抗もしなくなっていた。
地上への階段を上り、外へと出た。
空気が冷たく心地よく感じる。
満天の星が俺たちを照らしている。
淀んだ空気の中に長時間いたため、この新鮮な空気が実に心地よかった。
俺は王女と漆多をおろすと適当に座らせた。
漆多はまだ気を失っているらしい。地面に横たえても反応が無かった。
俺は座り込んでいる王女の横に腰掛けた。
「大丈夫か? 」
「ああ、なんとかね。……でも、あの程度の術式を発動させるだけでここまでの反動が来るなんて、ホントにどうしようもないわね。あの程度の制御にこんなになるなんて」
自分自身に失望したような口調で喋る王女の横顔はなんだか悲しそうだ。
「そんなに体調が悪いのか? 」
「体調なんてレベルの話じゃないわ。根本的に私の能力がスポイルされているのよ。……まあこんなチビッコになっているんだから当然【能力】も落ちてるんだとは思うけど、まさかここまで酷いとはね。炎を絞り込むだけの作業で、まるで年寄りのように息切れ起こしているんだから。こんなんじゃあまともに闘う事なんて考えられない」
一気に喋るが、喋ることさえ苦しそうだ。
「……まさか、ここまで、とはね。こんなんじゃあ、どうしようもないわ」
「姫、どうしたんだ? 」
一人で落ち込んでいる少女をどうにかして励ましてあげないと。俺はそんなことを思っていた。
でもこれといった台詞が浮かばない。
「おいおい、しっかりしてくれよ。こんなところでへこたれてなんていられないんだろ? 俺の契約者なんだからしっかりしてくれよ……。まあ契約者が何をするのかはよく分からないけど、姫が闘うべき相手は俺にとっても敵なんだから俺も闘うよ。いや俺が姫を守ってやるから、さ。だから落ち込むなよ。落ち込んでいたって何も変わらないだろ? さあ
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