第五十六話
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王女は俺を少し見つめた。
こんな時でも可愛いんだなあ。
「証拠隠滅しろっていうのね。わかったわ……」
そういうと同時に右手を少し上に上げる。
「…………」
何か呪文のようなものを詠唱したかと思うと、彼女の差し上げた右手の掌に火の玉が発生していた。最初は赤っぽい小さな炎だったが、やがて光が大きくなるとともにオレンジ色へと変化し、ついには真っ白激しく光る光の玉となる。
直ぐ側だけど不思議なことに直視できないくらいまぶしい。だけどちっとも熱くない。
白い炎なんて本当だととんでもない熱さのはず……。なんでだろ?
「あたりまえでしょ。まともにこんな近くで炎の玉なんか持ってたら服や髪の毛が一瞬で燃え上がっちゃうわ。これは実体ではない炎。これが狙った標的に触れた時に実体化し、全てを焼き尽くす本物の炎となるのよ。こんな芸当なかなかできるもんじゃないでしょう? 」
なんだか自慢げに語る。
「この炎があの化け物の残骸に触れたら、一瞬でこの部屋は溶鉱炉と化し、あっというまに骨まで焼きつくして証拠もなにも残らないわ。戦いで使えたらいいんだけど、私が投げる炎じゃあスピードがなさ過ぎて敵に避けられちゃうから無理。こんな状況じゃないと使えないから役に立たない能力だわ。本来の力が出せるならもっとやりようがあるんだけども。愚痴を言っても仕方ないわ……じゃあやるわね」
といって腕を軽く振る。
ん? ちょっと待てよ。
部屋が溶鉱炉と化す?? 王女が持ってる光玉は白いから何千度もあるんだろうな。溶鉱炉ってどれくらいの温度か分からないけど鉄が溶けてどろどろになる温度だろう?
ちょいちょい、そんなのにこの地下室がなったら、俺たちもやばいんじゃないの?
骨まで燃えちゃうぜ。
「姫、姫。ちょっと待って」
「何よ」
むっとした顔でこちらを睨む。
「なあなあ、冗談で言ったんだろ? ちょっと待ってよ。この部屋が溶鉱炉になったら、俺たちだって黒こげどころか蒸発しちゃうんじゃないの? 」
王女は少し考えて首をかしげた。
「あ、わすれてた」
俺はガクリと倒れそうになった。コントじゃないんだぜ。溶鉱炉はテレビでやってる熱湯風呂じゃないんだから。あんな生やさしい温度じゃないぞ。まあ本当に熱湯なら転がり回るレベルじゃない熱さだけど。あれは演出だから本当はぬるま湯だってこと俺だって知ってる。
「あーもう、無茶すんなよ。俺たちまで隠滅されるところだったじゃないか。それにこの建物だって派手に燃え上がるぜ。消防車がワンワンやってくるよ。そりゃもう大騒ぎになるんじゃないの? 」
「じゃあどうすればいいのよ」
取り立てて反省の態度を見せずに王女が腕組みをする。
「入り口のドアとかを溶接しちゃって入れなくしておけば
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