第五十五話
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は高揚する。
そして全身に力がみなぎっていくのを感じる。
ありとあらゆる細胞が活性化している感じだ。いつもは倦怠感虚脱感がどこかに重いしこりのようにあった。でも今はそれが完全にどこかに消え去ったかのようだ。
傷ついた体も再生速度を増していく。傷口なんか蒸発するように消えていくんだ。
ありえないありえない。ありえるはずがない。
俺が人肉を喰っている。嬉々として喰っている。それが当たり前の食事の様に。
共食い……。
まさか自分が。そんなの信じられない。
【んなことないだろ? 今美味そうに喰っているのはどこのどいつだ。ほらほら、まだまだ喰えるぜ。人肉は美味いだろう? ちょっと癖があるけどな。美味いだけじゃないんだ。是を喰うことで更に力をつけることができるんだぜ。それそれ、今までにない力が沸いてくるだろう? もっと喰ったらもっと力が付くぜ】
耳元で囁かれる。
うん、そうかもしれない。
何故かそう思った。それが当たり前のように。今までが異常だったかのように。
俺はもう分からなくなっている。
指が震える。
【そうだろ、肉がまだ食い足りないんだろう? さあ、いっちまえよ】
その誘いに頷き、俺は蛭町の頭の中に手を突っ込み、抉る。
ぷるぷるした感触を感じ、引き上げるとそこにはピンク色の肉塊。
口元に近づけ、臭いを嗅ぐ。どういうわけか何も臭わない。
何か分からないけど、むしゃぶりつきたくなり、舌を突きだし、掌に載った脳みそに触れる。
まだ暖かい感触。
そして一気に食らいついた。
自らの意志で……。
そして一気に飲み込もうとする。
その時、遠くから声が聞こえる。聞こえてきたんだ。
「……にをやってるの、シュ、ウ? 」
は? 誰だ、何だ?
俺は周囲を見回す。
さらに声が聞こえる。
「してるの、…の、馬鹿」
聞き覚えのある声だ。
なんかちびっこくて偉そうで、それでいて悲しみを抱えていて、それを表に出さずに我慢しているところが可愛くて守ってやりたい存在……。
「シュウ、お前何をやっている? 」
ハッキリと声が聞こえる。
なんだ王女じゃないか。
うつろな目で目の前で腕組みしている金髪の少女を見る。
なんか怒っているな。
そう思った。
「お前何をしているの? 頭でもおかしくなったの? 」
なんか怖いけど、俺は口の中にある、とてもおいしいモノののど越しを味わいたくなっていた。
だから王女が怒っているのは置いておいて飲み込もうとしたんだ。
其の刹那、視界の隅っこで王女が大きく振りかぶったのが見えた。
同時に頭が吹っ飛ぶくらいの衝撃が俺の顎を襲った。
かなり鈍い音がしたと思うと、俺の体は中を
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