第五十五話
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少々の抵抗はあるが、簡単に奴の頭が切れていく。まるで缶切りで缶の蓋を開けるようだ。ごりごりと俺は右手をのこぎりの様に動かし、頭蓋骨を切り裂いていく。
「いてぇーやめてくれぇ」
下の方から甲高い悲鳴のような声がする。見ると蛇の喉元にあった蛭町の顔が必死の形相でこっちを見ながら喚いていたんだ。
目が飛び出しそうなぐらい大きく見開き、歯はむき出し歯茎むき出し舌れろれろ。鼻水ずるずる状態。
デスマスクのようだった時からは想像も出来ない状態だ。
「たたたたたたた助けてくれ。やめてくれ。お願いだから」
唾を飛ばし、必死で命乞いをする少年がそこにあった。
俺は一瞬躊躇した。
しかし体は関係なく反応する。
力任せの膝蹴りが奴の顔のど真ん中にめり込む。
骨が砕け、肉が潰れる音がした。
「ぐげけげ」
膝を戻す時、血や肉が膝にへばりつき糸を引く。
「なんてことを……」
俺の呻きは俺の体からは発せられない。
【こんな奴、助ける気なんかねーだろ?、もともと。もちっと時間をかけたほうがよかったか? 】
「そうじゃない……」
【安心しろ、そんなの直ぐ忘れさせてやるよ】
言葉を交わしながらも俺の右手は蛇の開頭を完了させていた。まるで缶詰の蓋が開いたように、頭蓋骨が切り取られ、中にはピンク色の脳があった。生物の本や、アニメ、映画なんかでおなじみの形、色合いだ。
明らかに人間の脳だよこれ。
抵抗力はすでになくなりぐったりしているが、コイツは間違いなく蛭町の脳だよ。
俺は吐きそうになった。でも乗っ取られているから吐けない。
素手でその脳を抉る。
プリンのような触感。
ぷるぷるしたピンク色の気持ち悪い物体が俺の口へと運ばれてくる。
オエエ。
戻しそうになるが、戻せない。
俺は舌でペロペロ舐める。その臭い、味、舌に触れる感覚、全てが嫌悪すべきモノでしかなかった。なのに何故か電気ショックが俺の全身を貫いていく。射精にも似た感覚が下腹部を襲ってくるんだ。
【うえええおおうおうおうお、たまらねえ】
別の俺が吠える。
ツルツルと音を立てて蛭町の脳みそを吸い込み、ごくりと飲み込む。
気持ち悪い血の臭いと味が口の中に広がり、喉を通り過ぎていく。
必死で戻そうとするけど、体は俺の支配下に無い。
何よりも恐ろしいと感じたのは、それが美味いと感じた事だった。今までにない味覚が嫌悪感を吹き飛ばしていく。
これは俺の感覚なのか、それとも別のものの感覚なのか。
しかし、しかし、その境界はとてつもなく曖昧になっていく。
大騒ぎをしている人格と俺の人格も曖昧になっていく気がする。
むさぼるように脳漿を口へと運ぶ。
視覚と嗅覚で吐き気を感じ、味覚で美味を感じる。そして心
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