第五十四話
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蛭町は体勢を立て直そうと後退する。
しかし、その速度はあまりに鈍い。
直ぐに追いつくと数本の足を掴む。思った以上にこの足は硬く頑丈そうだ。掴んだ腕を振り払おうと暴れる。そして他の足で蹴ってこようとする。
俺は握った手に力を込め、思いっきり引き抜いてやった。
掴んだ足は根っこから引き抜かれ、ねっとりとした緑色の液が噴き出す。
再び悲鳴が上がる。化け物と人間の悲鳴の混声だ。
俺は吐き気がするが、俺の代わりに俺を動かす奴は興奮気味だ。
【楽しー。もっとわめけよ。泣いてくれ。たまらねえ】
たとえ絶体絶命状態であっても、体を明け渡したのは間違いだったんじゃないのか? 本気で後悔を始めていた。
しかし、残虐行為は続く。俺は手近なムカデの足を掴むと雑草でも抜くように引き抜いた。
ぶちぶちぶっち。
そのたびに悲鳴が上がる。
俺はムカデの片側の足をすべて引き抜くと、今度は逆の足を引き抜き始めた。
その空隙を縫って、背後から蛇の頭が再び俺に噛みつこうとしたが、まさに後に目があるかのようにその攻撃をかわすと二本の毒牙を両手で掴み、これも引き抜いた。
抜いた二本の牙は奴の胴体に深々と突き立てられる。
【死ね死ね死ね〜。キメラは死ね。化け物死ね〜】
奇妙な鼻歌で楽しそうに、俺はムカデの足をむしる。
直ぐに全ての足は引き抜かれ、ボディがムカデ、ヘッドは蛇の蛭町のキメラ体は頭が蛇で体がミミズみたいになってしまった。
うねうねと動くがうまく進めない。
俺は指さして大笑いする。
【かっこわりー。ぎゃはははは!!! 】
「痛てええよ、助けてくれ」
声がする。くぐもった声だ。
見ると体の中に取り込まれた奴の一人だ。膨れあがった体なので中が透けて見える。ブクブクと泡を吹きながらこちらを必死に見ている。……たしかまだ小学生だった奴の一人だ。残虐な目をしていた奴が今では完全に怯えきって助けを求めている。
しかし、もはや彼を救い出すことなど不可能だろう。キメラ化した蛭町の組織が彼の体の至る所に入り込み同化している。おまけに一緒に取り込まれた仲間の連中の腕は足がツタのように絡まり、それはもともと同じものだったかのように繋がっている。いかなる外科手術を持ってしてもそれらを綺麗に切り離し、それぞれの生命として生かすことなどできそうにもなかった。
すまないな……助けられそうもない。おれは独りごちた。
すると俺の直ぐ側で鼻で笑うような気配があった。
【安心しろ、助けてやるぜ】
俺の体を使う奴は明言した。その言葉は慈愛に満ちた声に聞こえる。
にっこりと笑う。表情筋が笑顔を形成している。
「ほんとでふか? 」
藁にもすがる感じで少年が訴える。
【もちろん、今助けてやるよ】
そ
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