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歌集「春雪花」
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 秋染めの

  筆を仕舞いし

   木の葉月

 想いて送り

    雪を待つなれ



 山々を色鮮やかに染めた十月は、もうその絵筆を片付けて去ってしまう。

 父の突然の死で慌ただしかった木の葉月…全く、時間とは瞬く間に過ぎ去るものだと思う…。

 そう思う中…彼への想いが掠れることもなく、寧ろ…会いたいと思う気持ちが強くなり、あの雪をまた見なくてはならないのかと…溜め息を吐くのだ…。

 冬も近い…霜月が訪れる…。



 君の声を

  聞きたく文を

    書きたるも

 想い留めて

    目を瞑るなれ



 何だか無償に寂しくなり、彼の声が聞きたくて仕方無くなる…。
 故に、私は彼へと手紙でも書こうかと考えて書き始めてみたが…途中で書く手を止め、それを破り捨てた…。

 送る勇気なぞ最初からありもせず、書いたとしても無駄以外のなにものでもないのだから…。

 弱々しい光の差し込むこの肌寒い部屋の中、私は一人…そっと目を閉じた…。

 会えない彼のことを…想う…。




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