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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
圏内事件 7
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価値のあるアイテムはギルドハウスの金庫に保管していた。犯人にとって、魅力的なものが他になかったのではないかな?」

 淀みなく言い切ったグリムロックの口元が、再び斜めに歪む。
 当のマサキからすれば、その答え自体は予想済みのものだった。もっと言えば、この質問自体に大した意味などなく、ただ何とか形勢を再逆転させられる材料を見つけるまでの時間稼ぎに過ぎない。マサキは続けざまに口を開きかけるが、それを先読みしていたかのようにグリムロックが言う。

「これ以上無根拠かつ感情的な糾弾をするつもりなら、遠慮してくれないか。私にとってもここは神聖な場所なのだから」
「……逃亡か。よほど後ろめたいようだな」
「どうやら、君には私の言葉が聞こえていないらしい。……まあいい。これ以上私を犯罪者に仕立てあげたいと言うのなら、日を改めてくれたまえ。もっともその時は、根拠なく人を犯罪者扱いする迷惑集団として、君たちの事を大手ギルドに報告させてもらうが」

 挑発に乗って何か漏らせば……。そんなマサキの薄い希望を嘲笑うように切り捨て、グリムロックは再び足を踏み出す。その後ろ背を、マサキが苦虫を噛み潰した顔で睨みつけた、その時――。

「待ってください……いえ、待ちなさい、グリムロック」

 静かな、しかし(はげ)しい何かを秘めたヨルコの声が、グリムロックとの間にぴんと響いた。その言葉の持っていた力強さに、男は仕方なくといった雰囲気で足を止め、今度は顔の半分だけを煩わしそうにこちらへ向ける。

「まだ何かあるのかな? ……それとも、まさか君たちまで、私のことを根拠もなしに殺人犯に仕立て上げようというのかい?」

 傲然と放たれたグリムロックの言葉を、ヨルコは胸の前に持ち上げた両手に視線を落としながら受け止めた。ヨルコは俯いたまま、しかしそれまでの彼女にはなかった強い感情を漂わせながら、噛み締めるように首をゆっくりと左右に振った。

「……いいえ。違うわ。根拠はある。……リーダーが殺された後、現場に残されていた遺品を発見したプレイヤーが、それをギルドホームに届けてくれたわ。だから私たちは、ここを……この墓標をリーダーのお墓にすると決めたとき、彼女の使っていた剣を根元に置いて、耐久度が減少して消滅するに任せた。でもね……でも、それだけじゃないのよ。皆には言わなかったけど……私は、遺品をもう一つだけ、ここに埋めたの」

 一体何をする気なのかと思いながらマサキが見ていると、ヨルコはすぐ傍にあった小さな墓標の前に跪き、その場所を素手で掘り返し始めた。その場の全員が息を呑んで見守る中、やがて彼女は土の中から一つの小箱を取り出す。その箱は、今まで土の中に埋もれていたにも関わらず、月光を浴びて銀色に光る。
 ――《永久保存トリンケット》。ヨルコが墓標から
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