アインクラッド 後編
圏内事件 7
[3/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
指輪事件の犯人はグリムロック以外にありえない。
キリトの推理ショーが結論を迎えるが、マサキは未だグリムロックの企みを暴けずにいた。今キリトが語ったとおり、少なくとも《指輪事件》に関して、グリムロックは言い逃れできないように思える。だが――
「なるほど、面白い推理だね、探偵君。……しかし、一つだけ穴がある」
グリムロックが口を奇妙な形に歪めてそう口にした瞬間、マサキは舌を鋭く弾いた。マサキの脳が更に回転数を跳ね上げる。が、マサキがグリムロックの思惑に辿り着くより早く、香港のヒットマンめいた雰囲気をまとった鍛冶屋は斜めに曲げた口を開いた。
「確かに、君の推論は大枠では正しい。当時、私とグリセルダのストレージは共有化されていたから、彼女が殺されたとき、そのストレージに存在していた全アイテムは私の手元に残った。……そう、ストレージに存在していた全アイテムは、ね」
「ッ……!」
グリムロックの言わんとしていることをようやく理解したマサキは、今までにない激しさでグリムロックを睨みつけながら、ギリ、と奥歯を強く噛み締めた。肺の空気を一気に吐き出しそうになるのをぐっと堪え、動揺を気取られぬよう、静かに放出する。
グリムロックの反論はこうだ。「確かにストレージにあったアイテムは全て自分のもとにドロップしたが、その時指輪はストレージになかった。故に、グリムロックの足元にドロップすることはなかった」。形勢が逆転したと悟ったか、グリムロックは勝利を確信したように口角を上げ、マサキたち全員をぐるりと見回し深く頭を下げた。
「では、私はこれで失礼させてもらう。グリセルダ殺害の首謀者が見つからなかったのは残念だが、シュミット君の懺悔だけでも、いっとき彼女の魂を安らげてくれるだろう」
「待て!」
帽子を深くまでかぶりなおし、身を翻そうとしたところで、マサキが止めた。グリムロックはそれに反応して足を止め、顔だけでマサキに振り向く。
「……おかしいだろう。グリセルダを殺害した犯人は、指輪だけを盗み去っている。睡眠PKという手法を考えれば、アイテムストレージにあった他のアイテムも一緒に奪った方が利益は出るはずだ。そうしなかった、いやさせなかったのは、どうせ全て自分の懐に入るから。違うか?」
グリムロックは一瞬思案するように顔を伏せかけたが、すぐにマサキを見直して滑らかに答えた。
「……さあね。下手人の心境など、私には判りかねる。だが一つ、個人的な推測を述べるとするならば……当時の私たちは一介の中層ギルドに過ぎなかった。当然、そんなレアアイテムなど幾つも持ってはいないし、ある程度
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ