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ソードアート・オンライン 穹色の風
圏内事件 6
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起こしかけていた右手がすうっと冷えていくのを感じた。
 ――そうだ。それでいい。
 マサキは目を開け、面白そうに顎を突き出してこちらを見下ろしているPoHに向かって言い放つ。

「確かに、一人なら無理だろうな。が、生憎、俺はそこまで馬鹿じゃない。――三十人の攻略組がじきに来る。それまでの時間稼ぎ程度なら、俺一人で十分だ」

 マサキが感情を封じ込めたポーカーフェイスで告げた直後、足元に微かな振動が走った。それは三人も同じだったようで、動揺を隠せない視線を辺りに彷徨わせる。
 マサキがPoHたちに細心の注意を払いながら視線を左右に配ると、主街区から一直線に駆けて来る騎馬を見つけた。
 アインクラッドにはアイテム扱いの騎乗動物(マウント)は存在せず、NPCが経営している厩舎に行けば牛や馬などを借りられるが、かなり高額な上乗るためにはかなりの技術が必要とされるため、デスゲームとなったこのSAOで、わざわざ乗りこなそうという好き者は皆無と言っていい。それがこのタイミングでとなると、恐らく乗り手はキリトなのだろうが……。彼が乗馬を習得していたのか、それとも持ち前のセンスで何とかしたのかは知らないが、この土壇場に大枚はたいてまでそれを使って駆けつける無茶苦茶さとお人よし加減に、マサキはひっそりと呆れの溜息をついた。
 そうしている間にも、騎手と同じく漆黒の毛並みを白い燐光で包んだ騎馬は猛スピードで丘を駆け上ってくる。そしてマサキの横手で急ブレーキを掛けると、後ろ足だけで立ち上がり、バランスを崩した騎手を振り落とした。

「こいつが来たってことは、もう他の奴等も出発済みってことだ。増援が来るまで、もう十分もない」
「……Suck」

 内心の呆れを気取られぬよう、顔にポーカーフェイスを貼り直してマサキが言うと、PoHは短く罵ってこちらに背を向けた。右手の包丁をくるくると回して腰のホルスターに収めようとした寸前、思い出したようにマサキを指す。

「貴様を殺す奴はもう決まってる。絶望と血の海で無様に溺れさせてやるから、楽しみにしといてくれよ」

 最後にもう一度ニヤリと笑って見せると、今度はしっかりと包丁をホルスターに収めた。ばさりと音を立ててポンチョを翻すと、今度こそ部下二人を連れて丘を下りて行く。

「っと、意外といいタイミングだったか?」
「振り落とされなければ完璧だったな」

 三人のカーソルが《索敵》スキルの範囲外に消えたことを確認すると、マサキはキリトに見せ付けるように溜息を吐いた。蒼風を鞘に収め、まだ呆然とこちらを眺めていたシュミットに解毒ポーションの瓶を手渡す。長身の男は震える手でそれを飲み干すと、がしゃがしゃと音を立てて上体を起こした。

「……マサキ、キリト。助けてくれた礼は言うが……なんで判ったんだ。あ
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