第十八話 陥穽
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かもしれないと言っています」
「!」
ドーソン司令長官が愕然としている。そして艦橋内は参謀達の声でざわめいていた。気付くのが遅い! いや遅かったのは私も同じだ……。帝国軍が執拗に同盟軍を挑発したのは同盟軍をイゼルローン回廊に引き寄せるためだったのだろう。
考えてみれば公にとって同盟軍が艦隊を二分するか否かは分からなかった。つまり各個撃破が出来るかどうか分からなかったのだ。そんなあやふやな事を前提に作戦を立てるわけが無い……。
要塞攻略戦も同様だ。同盟側が攻略戦を行う可能性は低かった。回廊付近でこちらを挑発し続けたのは回廊内へ引きずり込むためじゃない、同盟軍の目を自分達に引き寄せるためだ。おそらくはその陰で帝国軍本隊が動く……。
ブラウンシュバイク公の狙いは要塞攻略戦ではない、イゼルローン駐留艦隊との挟撃だ……。同盟軍が挑発に乗り回廊内に入っても入らなくてもどちらでも良かった。回廊付近に引き寄せるだけで良かったのだ……。
「遠征軍の本隊は我々の後方にいる可能性が有ります。すぐさま撤退するべきです。これ以上ここに留まるのは危険です」
「……撤退しろと言うのか。しかし確証がないだろう」
ドーソン司令長官は何処か納得しかねる表情をしている。未だ状況が飲みこめずにいるのか……。
「では一個艦隊を前線から引き抜き後方を警戒させてください」
「……」
「閣下!」
駄目だ、納得していない……。それ以上に私を信用していない。信用が有れば多少の無理は聞いてもらえただろう。しかし、その信用が無い……。
「左後方に敵艦隊! 多数、一万隻を越えます!」
悲鳴のようなオペレータの声だ。そして別なオペレータが同じような声を上げた。微かに震えている。
「前方の艦隊に戦艦グルヴェイグを発見! あれは駐留艦隊旗艦です!」
艦橋の彼方此方で悲鳴のような声が上がった。皆顔を引き攣らせている。遅かった……、勝敗は決まった……。
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