第十八話 陥穽
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まで帝国軍を押し込んだ、それで満足すべきだろう。それにしても不愉快だ、艦橋に居る参謀達全てが不安そうな表情をしている。グリーンヒルもだ、俺がこのまま要塞攻略戦に突入するとでも思ったらしい。俺は勝ちたいのだ、戦いたいのではない。何故負ける戦いをしなければならない……。
「良いだろう。帝国軍が攻撃してきてもこちらは回廊の入り口で応戦、回廊内には入らない事とする。第二艦隊との合流を急げ」
「はっ」
グリーンヒルが僅かにほっとした表情を見せた、失礼な奴だ……。
宇宙暦796年 1月19日 同盟軍宇宙艦隊総旗艦ラクシュミ ヤン・ウェンリー
同盟軍と帝国軍がイゼルローン回廊の入り口で向かい合っている。同盟軍は第二艦隊が合流し兵力は四万六千隻に戻った。一方の帝国軍は二万隻と兵力に変わりは無い。当初、両軍は射程距離外で睨みあうだけだったが先に帝国軍が動いた。
僅かに射程距離内に入り攻撃を仕掛ける、そして素早く後退する。こちらが踏み込んで攻撃しようとするとさらに後退する。もう四時間近く続けているが明らかにこちらを回廊内に引き摺り込もうとしている。
ドーソン司令長官は苛立っているがそれでもイゼルローン回廊内への突入は踏み止まっている。回廊内に入ってしまえばどこで戦闘を打ち切るかが難しくなる。回廊の外で対峙するのが賢明だ。ブラウンシュバイク公もいつまでも対峙していられるわけではない。何時かは撤退する。
大兵力をもって持久戦で相手を撤退させる。いささか消極的だが明らかに見え見えな挑発に乗る必要は無い。このまま根競べで対応すれば良い。……妙だな、帝国軍の動きがおかしい、不自然だ。どういう事だ。……まさか……。
「司令長官閣下!」
「……何だね、ヤン准将」
ドーソン司令長官が私を不機嫌そうに見ている。私と話などしたくない、その想いが露骨に態度に出ている。うんざりしたが、それ以上に帝国軍が気にかかった。もしかするとしてやられたか……。
「帝国軍の動きが不自然です」
「不自然?」
「先程から我々を挑発するのは五千隻程度の艦隊でしかありません」
「だからなんだね」
ドーソン司令長官の表情を見て分かった。嫌がらせでは無い、本当に疑問に感じていないのだ。じれったい思いで言葉を続けた。
「我々を回廊内へ引き摺り込もうとするなら二万隻全てを使って行った方が効果的な筈です」
「……」
「にもかかわらず一部の艦隊しか挑発行動を行っていません。指揮系統が違う可能性が有ります」
グリーンヒル参謀長が慌てた様子でオペレータに何かを命じた。多分、艦艇の識別を命じたのだろう。フォーク中佐も顔を強張らせている。
「どういう事だ、指揮系統が違う? 一体何を言っている」
「あの動きの無い艦隊はイゼルローン要塞の駐留艦隊
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