第三十二話
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りに落ちそうになる。
そんなところで不意に唇に柔らかくて温かい何かが触れて、一体何なんだろうと思って目を開いた。
「!!」
竹中さんの顔がドアップで私の目の前にあるのにも驚くけど、とどめに私の唇をしっかりと自分の唇で塞いでいるから尚更吃驚だ。
政宗様なら振り払うけど、何かこんな美人とキス出来るのはすっげぇ役得って感じで……うわー、どうしよう! 当分顔洗えない!
ゆっくりと唇を離して私を見る竹中さんは、今までで一番優しい顔をして笑っていた。
それがまたとんでもなく美しくってくらっときちゃう。
美人の笑顔は反則だよぉ〜、もう破壊力が半端じゃないし。何ていうか、天使?
「ありがとう、小夜君。今はゆっくりお休み。まだ本調子じゃないのだから」
いや、眠れないっすよ。興奮しちゃって。
っていうか竹中さんとキス出来たんなら、もうそのまま天国に直行しちゃいそうな感じだし。
いやもうマジでどうしよ、何かムラムラしてきた。
なんてそんなしょうもないことを思っていたけれど、身体の方はやっぱり具合が悪くて、すぐに眠りに落ちてしまった。
出来ればもうちょっと余韻に浸っていたかったけどね。
ちなみにしばらくの間、意識が戻る度に思い出して一人でにやけていたのは言うまでもない。
一月くらい城で療養生活を送って、怪我の方も大分良くなってきたかという辺りで竹中さんに来客が訪れた。
名前は羽柴秀吉、あえて説明するまでもないけど、後の豊臣秀吉です。
ついに勧誘に現れたか。稲葉山城を落としたわけだから、当然来るよね。
……当然? あれ、もしかして私ったら、秀吉に勧誘させるためのフラグを自分から立てた?
うわっ、何たる失態! こりゃ、バレたら切腹もんだわ……だって天下人になる男とその軍師を引き合わせることしちゃったんだもの。
これはほとぼりが冷めるまで当分奥州に戻れないや。となると、また西に向かって逃亡生活?
……いや、これも仕方が無いか……いくら力量を見たいからって何で手を貸しちゃったかな、私。
もう、思ってることとやってることが思いっきり矛盾してるよ……。
ちなみにやってきた秀吉さん、これがまたデカイの何のって。無双の秀吉や史実の秀吉とは大違い。
猿顔だったってのは有名だけど、これじゃ猿っていうよりもゴリラだよ。ドンキーコングって奴?
三顧の礼の後に秀吉に着いて行くのかと思いきや、意外にもあっさり竹中さんは秀吉の勧誘を受け入れていた。
稲葉山城を落としたという武功を持って秀吉に受け入れられることになったみたいなんだけども……実はちょっと気になってることがある。
「あのー……」
おずおずと声をかけると、眼光鋭く私を見てくる。それがちょっと……
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