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逆さの砂時計
正義なんて存在しない
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じゃねぇか。結局、本当は何も信じてないから、そんなクソたわけた妄言を吐けるんだろうが。胸クソ悪ぃジジイ共が! 正しき神は、パトラ様のみ。罪人と語り合え? 折り合いを付けろ? バカバカしい! どんだけ脳みそイカレてんだっつーの! 死ね!」

 やっぱり、最後は『死ね』になるんだなあ。
 タグラハン大司教に目線を送れば。
 彼は、仕方ないねと両肩を持ち上げて応えた。

「そう見えるんなら、それで構わないよ。見方を変えろなんて傲慢(ごうまん)(はなは)だしいことを言うつもりはない。でも君は今日、人間にとって明確な罪を犯した。それは反省しなさいね」
「は!? 何が罪ぃ……っつ」
「刃物なんか振り回してたら危ないでしょ? 殺人未遂は立派な罪だよ」

 青年の両腕を強めに押さえて、その首に自分の左腕を回す。
 このまま都市警団に引き渡して神殿へ帰ろう。
 気持ち良い散歩が台無しだよ、もう。

「ああ、そうだ。君にもう一つ尋きたいんだけど」
「っんだよ!」
「サンドイッチの卵は堅焼き派? 半生派?」

 わずかに目を見開いた青年は、体をブルブルと震わせ。
 信じられないと顔に書いて。

「パンなんて、そんな頭にも体にも悪いモン食えるか!」

 と、大声で叫んだ。

 うーん……そうきたかあ。



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