Fate/stay night
1133話
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スライム。その言葉がどこから来たのか分からない。
だが、その言葉を俺が口にした瞬間、突然どこからともなく銀色の何かが飛び出し、凛の方へと向かおうとしていた蟲を纏めて包み込む。
「え?」
間の抜けた声を上げたのは、銀色の存在……スライムに助けられた凛。
そんな凛の様子に苦笑を浮かべつつ、スライムがどこから現れたのかと視線をスライムの根元の方へと向けると、そこにあったのは穴。
……そう、穴だ。
もっとも、それは床に開いた穴とか、壁に開いた穴とか、そういう穴ではない。
空間そのものに開いた穴とでも言うべき穴。
その穴から出てきている銀色のスライムは、俺の意思に従って縦横無尽に暴れ回っていた。
銀色の液体金属の如き身体で一気に広がり、凛に向かっている無数の蟲を呑み込む。そして飲み込んだ次の瞬間にはまるで蟲そのものが存在していなかったかのように、スライムの中から消え失せていた。
それが、どういう理屈で行われているのかは分からない。
だがそれでも、どういう行為なのかというのは殆ど本能的に分かっていた。
即ち……吸収。
この銀色の……とてもではないがスライムという名称に相応しいとは思えない存在は、触れた相手を任意に吸収する事が可能なのだと。
何故このスライムの使い方が分かるのか。それは分からない。
いや、何なのかというのは理解している。
これは……これこそが、俺の宝具なのだ。
その効果も分かる。分かるんだが……それでも、この宝具に対する知識だけであり、何故俺がこのような宝具を使えるのか、そしてこの宝具がどんな謂われのあるものなのかというのは、全く判明しない。
そこに若干の不満は覚えるが、それでもこのスライムがあれば数だけは多い蟲を圧倒するのもそう難しくはない。
「凛、近くに!」
スライムを操りながら凛へと声を掛ける。
すると凛は何か聞きたげな表情を浮かべつつ、それでも現在はそんな事よりも現状を何とかする方が先だと判断したのだろう。宝石を構えながら俺の方へと近づいてくる。
「ちょっと、アークエネミー。これが何なのかっていうのは後で聞かせて貰うけど、大丈夫なんでしょうね?」
「ああ、問題ない。このスライム、かなり高性能な力を持っているのは分かる。いいか? 俺の側から離れるなよ?」
そう言いながら、一応念の為と凛の手を引っ張って抱きしめた。
冬服なのでその身体の感触を楽しむ事は出来ないが、凛にしてみればやはり恥ずかしいのだろう。頬が赤く染まっているのは、照れか羞恥か怒りか……それとも、自分の見た事のないものを見る事が出来た興奮か。
ともあれ、一瞬口を開きそうになった凛だったが、結局それ以上は何を言うでもなく黙り込み、俺が何をするのかと視線を向けてくる。
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