第六章〜知らぬ顔の〜
第二十八話
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
入れようとしたってのは有名な話だしね。
しばらくお世話になっていて気がついたことがある。
こんな樹海のようなところにわざわざ好き好んで訪ねにくる人間がいるということだ。
関わっちゃいけないかと思って知らないふりをしていたんだけれど、
どうにも毎回同じ話をするもんだから私もしっかり内容を覚えてしまったくらいで。
竹中さんは元は斎藤家の家臣だったようで、あまりの待遇の悪さに早々に隠居を決めたらしい。
うちの小十郎みたいに男臭い容姿が好まれる戦国の世において、
竹中さんみたいな美しい容姿は軽んじられる元にしかならず、それで相当酷い仕打ちを受けてきたのだとか。
大抵は我慢してきた竹中さんも、櫓から小水を掛けられたのにはプッツン来たらしくて、そのまま城を出て隠居を決めたらしい。
本当は城攻めにでもしたい気持ちはあったらしいんだけど、兵の調達が上手くいかなかったとかで泣く泣く諦めざるを得なかった。
城攻めも出来ないのならばと嫌気が差して、早々に隠居をしてしまったという。
で、隠居生活半年目を過ぎた辺りから城攻めを行わないかとしきりに勧誘の声がかかるようになった。
お誘いを掛けてくるのは彼のお舅さんの安藤守就さん。
てか、奥さんいたんだ、ってのはさておいて……この斎藤家ってのは当主の龍興さんが気に入った家臣しか手元に置かず、
それ以外の家臣は冷遇するってところから、寵愛されてる家臣は好き放題暴れ回ってて、寵愛されてない家臣をいじめるようなこともするらしい。
安藤さんの場合、長く斎藤家に仕えていることもあって、この冷遇にもそろそろ我慢の限界みたいで、
この際さくっと城攻めでもしちゃわない? とお誘いの声をかけてるわけだ。
今はこれといって目立った功績の無い竹中さんであっても、一人でも兵力が欲しいところなのだそうで。
「そうは言っても、城攻めを諦めさせたのは他ならぬ義父上ではございませぬか。
どのようにお使いになられるのかは分かりませぬが、雑兵の一人としてお使いになられるおつもりであるのならば他を当たって下さいませ」
丁重に断る竹中さんに安藤さんが食い下がる。
絶対に諦めない、そう考えているのがよく分かるだけに、これは何が何でも通したい戦なんだなというのが良く分かった。
「そう言うな、半兵衛。あの時はまだ勝算が無かったゆえ、諦めさせるほか無かったのだ。お前も分かっておろうが」
とはいえ、この安藤さんのお誘いに竹中さんは取り付く島も無い。
「お引取り下さい。何を言われても、私が手を貸すことはございませぬ」
いつもこんなやり取りで安藤さんが引き上げるわけなんだけど……
実はちょーっと竹中さんもこの提案に揺れてるってのは気付いてたんだよね。
安藤さんもそれが分か
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ