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黒の剣士は入るゲームを間違えた
第一話 まさかの入り
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喧騒の中に無数の声が飛び交う。あるものは若い女性、あるものは中年の神父、あるものは駆け出しの冒険者。そんなもの達が仲間と、友人と、家族とみんながみんな明るい顔とはいえないが悪い雰囲気を作らずに会話していた。
ここはある街の酒屋であり、真っ昼間だというのに大勢の客で店内が賑わっている。
ただし彼らは素性は違い、内容が違ってもあるひとつの話を原点にしていた。

―――知っているか、"アレ"

―――"アレ"?なんだそれ

―――知らないのか?"アレ"だよ。あの突如現れたらしい剣士の話!

―――ああ"黒の剣士"ね。凄いモンスターを一人で倒したらしいやつ?

―――そう!それそれ!くぅー生で見てみたいもんだねっ

"黒の剣士"。そのワードをもとにして彼らは様々な話を作り上げていく。中には本当にあっていそうなものや、眉唾物の噂話程度のものと色々な話が転がり込んできていて、一言で言うなれば"玉石混合"だ。つまり信用するに値する情報は限られているということだ。そんな事は彼らもわきまえているだろう。ノリ半分本気半分で話に乗り出している、つまり彼らは楽しければいいのだ。そこに噂の審議は関係ない。話を盛りに盛って、普通なら本体より尾ひれが大きくなっている所なんだが、この噂はまだ本体の大きさを"上回っていない"。
・・・噂には上限が明確に設定されている。面白いやかなり凄いまでは行くのだが、"ありえない"という領域に踏み込むことがほとんど無い。ここの場所の上限はアダマンタイトプレートを持つものができる事までと決まっていて、ここの人は何も言われていてもいないのに全ての者がその域を絶対に脱しない。

"チャリン♪"

一つの微かな音が店内に凛と響く。騒がしく賑わう店内にそれはもはや雑音の部類だろう。ゆっくりとそのドアを開けた主が日光からなる逆光を抜けて、店内の床にそのブーツを触れ合わせる。勢いよく店内に入った影響なのかその長い黒髪が風にたなびく。顔の真ん中に伸びる髪の筋はチャームポイントとして大きく目立ち、全体的に黒い服は艶かしい白肌を際立たせる。服のデザインからか胸元が少し開いている点にも酒場の者達が大きく目を見張る。鉄の胸当てはもう衣装じゃないかと思うほどマッチしており、腰の外套も肌に密着している内服を隠していて逆に魅力的だ。その目に宿るのは鮮やかな紫紺。それを見るものはごくりと大きく唾を飲む。

入ってきたその人は戸惑うことも無く、空いている席に座る。すぐに注文取りが近づき問いかける。

「・・・あなたが"黒の剣士"なのですか?」

「・・・へ?」

自分の昔のあだ名を問われた青年(・・)は驚愕の表情を顔に浮かばせる。突然のことで驚くのだがすぐに正気を取り戻す。かの有名なデスゲームはここには存在しないのだからと自分に言い聞
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