第164話 復讐の顛末 後編1
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は涙を流し正宗に懇願した。彼女は正宗に向けて手を差し出した。正宗は彼女の側で膝をつくと彼女の手を握った。
「お前の子分が何故に蔡徳珪に拘束されている?」
正宗は魏延の話を聞き、魏延を訝しんだ。
「蔡徳珪のところで傭兵の募集をしていて転がりこんだんだ。でも、あいつが朝敵になっていると後で知って逃げようとしたんだ。だけど、私と手下は蔡徳珪軍に拘束されて。子分の命が惜しいなら、あんたを襲撃する夜襲に加われって命令されたんだ。もし、あんたを殺せば解放してやると言ったんだ」
魏延を弱々しい声で正宗に事情を説明した。もし、魏延が正宗を殺すことが出来解放されたとしても、その後彼女達は大陸中に指名手配され生きる場所はないだろう。正宗は魏延に敢えて言わなかなった。魏延の話を聞いて、彼女が想像以上に思慮が足りないと理解できたからだろう。
「寄せ集めの雑兵だけの部隊だぞ。使い捨てにされるとは思わなかったのか?」
正宗は話題を変えた。
「面子を見て分かったよ」
魏延は短く答えた。彼女は辛そうな表情を一瞬するが悔しそうな表情になった。
「子分を見捨てられるわけないだろ。ずっと一緒だったんだ」
魏延を悔しそうに涙を流していた。その様子を見て正宗は魏延の手を握る力を強めた。彼は怒りを覚えているようだった。
「私の子分を助けて欲しい。襄陽城に拘束されてるはずなんだ」
魏延は縋るような目を正宗に向けた。今死のうという状況で彼女は手下のことを心配していた。そのことに正宗は心を打たれた様子だった。彼女が思慮が足りないとはいえ、自分を犠牲にしても仲間を救おうとした彼女の献身さに同情したのだろう。
「お前も救ってやろう」
正宗は魏延に声をかけた。
「ありがとう。気休めでもうれしいよ」
魏延は血の気を失った苦しい表情で正宗に微笑んだ。彼女の唇は紫色に変色し、吐血で汚れていた。
「王に二言はない」
正宗はそう言うと魏延の手を放し移動した。彼は自分が抉った魏延の横腹を見た。月明かりだが腸が露出しているのが分かった。このままだと魏延は感染症で死ぬだろう。正宗は魏延の深い傷に手を当て、彼女の傷を治療した。正宗と彼女が光に包まれる傷はあっという間に塞がっていった。兵士達は神々しい光景をただ見守っていた。
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