第164話 復讐の顛末 後編1
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敵兵が迫る北東の方角に向け正宗は朱里が編隊した騎兵五千を率い出立した。今回、正宗は近衛兵である孫観と呉敦に騎兵五百をそれぞれに与え指揮させた。
暗闇はどこまでも続いていた。その暗闇を照らすように天井には月が堂々と地上を見下ろしていた。しかし、少し月の周囲に雲がかかり、月明かりは弱くなっていた。正宗と兵士達は心細い月明かりだけを頼りに視界の悪い街道を行軍していた。彼に同行した兵士達は彼の後ろをゆっくりと付いていっていた。兵士達は危険な夜間の行軍であったが一部を除き不安な様子はなかった。彼らは正宗に全幅の信頼を抱いているように落ち着いた表情だった。
不安げな表情を浮かべる兵士は部隊長に抜擢された孫観と呉敦だった。彼女達は昇進に不安を覚えているというより、夜間行軍に不安を覚えているようだった。二人の反応は当然と言えた。夜間の戦闘は視野が悪く同士討ち可能姓があり危険であると相場がついているからだ。
孫観と呉敦を余所に正宗は悠々と兵士達を先導していた。その様子に二人は正宗のことを異常な存在を見るような視線を向けていた。それは正宗が月明かりだけの視野の悪い道を日中に馬で移動するような動きを見せていたからだ。正宗の乗る馬も主人の落ち着きを感じているせいか、落ち着いた様子で先を進んでいた。
その後、正宗と兵士達は街道を外れた足場の悪い道に進路を変え慎重に先を進んでいった。そして、二刻(三十分)位経過した頃、漸く悪路から抜けでることができ開けた場所に出た。
「皆、止まれ!」
正宗は手を上げ後ろから付いてくる兵士達を静止した。彼は何かを捉えたように目を細め遠くを睨んだ。
「清河王、どうされたのですか?」
遠方をただ凝視する正宗に孫観が声をかけた。正宗は沈黙していたが、馬の方向を変えて孫観を見た。
「敵がこちらにぞろぞろと近づいている。数は六千というところか」
正宗は顎に手をやり考える仕草を取りながら孫観の質問に答えた。
「真にございますか!?」
孫観は驚いた半信半疑の様子だった。
「何だ私の言葉が信じれないのか?」
「いいえ、そのようなことは」
孫観は正宗に恐縮していた。しかし、その表情は納得出来ていないようだった。野性味溢れる活動的な雰囲気の呉敦も同様だった。
「まあいい。私が何故に敵が近づいているかわかるか教えてやる。夜襲では皆が心を一つにして攻めなければ失敗するからな」
正宗は孫観と呉敦を順に見ると言った。
「私が何故に敵襲を予見できたか分かるか?」
「いいえ」
呉敦は武人然とした様子で率直に答えた。
「余は人の放つ気を感知できる。離れていようと手に取るように分かる。相手が近くにいるほど、その相手の力量も大体わかる」
「そのようなことが出来る
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