39.魔導書事件
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れでも、ベルはこれ以上ミアの弱弱しい表情を見ていられなくなって折れざるを得なかった。
きっとミアが他の数名を連れて別の場所に居たのは、自分でもその顔を周囲に見せたくないからなのだろう。リューの瞳も、それを察して欲しいと言いたげだった。
「折角お越し頂いていて申し訳ありませんが、女将は気分が優れないようです。出口までご案内いたしますので、どうか御引きとりを」
「うむ。事件が解決して貴方がまた笑える日を願っています、ミス・ミア」
「僕、上手く言葉に出来ませんけど……犯人、捕まると良いですね」
「――アンタ達は、燃えないでおくれよ」
部屋を後にする二人の背中にかかったのは、深い悲しみと不安に駆られた言葉だった。
リューに促されるがままに出口へ向かいながらも、ベルは素直に引き下がったリングアベルの行動に納得できずにいた。普段はあれほど女性の笑顔の為にと強く言っているリングアベルが、今日のミア相手には随分消極的な気がした。
リングアベルは女性の心を時に委ねたりしない。ベルのリングアベル語録曰く「恋は瞬時に沸騰するが、熱を加えなければあっという間に冷めるもの」……彼の言葉の意味を十全に理解しているベルではないが、少なくともこのままだとミアの心が良くない方向へ向かってしまうことは分かっていた。
(大人の事情とかあるのかもしれないけど……やっぱりこのまま引き下がるのは嫌だな)
ここで『豊饒の女主人』の皆に何も手助け出来ずに引き下がるのは嫌だし、燃えた原因が分からずじまいだ。
ミアのいた宿の出口までたどり着いたベルは、勇気を振り絞って提案した。
「先輩、この事件に――」
「さて!それでは早速エイナ嬢の所に行って今回の事件のあらましを調べるとするか!」
「――って、えええええええ!?さ、さっき手を引くって言ってたのに盛大に首突っ込みに行ってるじゃないですか!?」
「当然だろう!!至急、速やかに!!我等がメイドたちと女将の笑顔を曇らせる不届きな『原因』にご退場願う!!無論、ミス・ミアに心配をかけぬよう速やかにな!!」
そこに居たのは、いつも通り自信満々のリングアベル。先ほどまでの大人しさはどこへやら、既に事件解決へ完全に乗り気だ。しかも、珍しい事にその声に続く声が上がった。……ベルたちの後ろから。
「では、私は知り合いのエルフに声をかけて『魔導書』に関する知識を持った協力者を探します」
「ええっ!?リューさんまで参加するんですか!?」
今まで何も話題に触れなかったリューが唐突にこの事件に首をツッコむ手伝いをすると言い出したことに、ベルは更に驚かされた。ミアにだけは頭が上がらないといった風だったこの人が、まさかミアの言いつけを自ら破るとは思わなかったのだ。
しかし、リューにもリュー
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