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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
39.魔導書事件
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の家であり、心の支えでもあるのだ。それが突然燃え尽きれば誰だって悲しい気持ちになる。

「無理はしないほうがいい、シル。女性に悲しい顔をさせないのが俺の流儀ではあるが、時には誰かの胸を借りて泣きたいときだってあるはずだ。俺の胸ならいつでも貸すぞ!」
「じゃ、お言葉に甘えてベルくんを……」
「ええっ!この流れで僕ぅっ!?」
「微塵も迷いがないなシル……いや、なんとなく予想してたが」
「あっ!!レジェンドとその弟子が朝から来たニャ!!」

 アーニャの一声が響き、二人の来訪に気付いた従業員たちが一斉にそちらを向いた。
 リングアベルもベルも、この店では特に店員に気に入られてる駆け出し師弟コンビだ。見慣れた顔の姿に店員たちの顔色も明るくなる。

「リングアベル様っ!来てくれたのね!?」
「ちょっとシル!!何を勝手にベルくんを独り占めしてんのよぉ!!」
「え〜ん!!聞いてよリングアベル!店が……店が燃えちゃったのぉ!!……という訳で立て直し代金1000万ヴァリス頂戴っ♪」
「何言ってんのよ!古人曰く、『ねだるな、勝ち取れ』よ!代金ぐらい私たちで工面しなくてどうするの!?」
「そうだ、折角だから立て直しが終わるまで露店にしてみない!?テーブルとイスとパラソルを用意して、この二人にもウェイトレスさせて女性客も引き込むの!!」
「ああ、それいい!!喫茶店みたいで洒落た感じ?で、夜になったら屋台みたいに盛り上げるとか!!」
「こらこら!ミア母さんに相談もなしに勝手に話を進めない!!」

 二人が来たというそれだけで、彼女たちに活気や余裕がやっと戻ってきたらしい。既に二人を置いてけぼりに別の話で盛り上がり始める者も出てきた。

「やはり彼女たちには活気ある笑顔がよく似合う!エネルギッシュで見ているこちらも元気が湧き出るようなこの雰囲気がなければ始まらん!!」
「それに、生き生きしている皆の笑顔は太陽のように眩しい!!………ですよね、先輩?」
「その答えでは70点だな。太陽に例えたのはいいが、それだけでは彼女たちの美しさや可愛らしさが伝わらない」
「厳しいっ!?でも確かにその通りかもしれません!!」
「ふふっ………なんだか二人のマイペースのせいですっかりいつも通りになっちゃいましたね?」
 
 無地を確認し、彼女たちに笑顔を取り戻す。冒険者の仕事ではないが、リングアベルとベルの二人の仕事ではある。そういう意味では、彼らは彼らの働きをしたと言えるだろう。二人に遅れてティズとアニエスが来た頃には、『豊饒の女主人』従業員一同は既に立て直しの見積もりや撤去代金を計算していたという。
 この逞しさとバイタリティの高さは、あの女将にしてこの子らありといったところだろうか。



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「――犯人探しなんてこと
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