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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
39.魔導書事件
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 『豊饒の女主人』炎上の知らせがベルコンビの耳に入ったのは、翌日の朝のことだった。
 二人が朝食を取ることも忘れて事件現場にたどり着くと、そこには既に無数の人だかりが出来ていた。皆の視線の先にあったのは――無残にも漱塗れのあばら家と化していた。

「ほ、本当に燃えてた……!!」
「何という事だ……ロマンある男達の楽園がこのように黒ずんでしまうとは……!!」

 呆然とするベルはともかく、地面に蹲って土を引っ掻くというノルエンデ崩落時のティズ並の悲しみを背負うリングアベルからそこまで悲壮さが伝わらないのは何故だろうか。多分、やっているのがリングアベルだから真剣味が風船並みの重さになっているのだろう。

 野次馬、建設業を営むファミリアの物資運び込み、ギルドの聞き込みなど様々だが、冒険者たちの表情には驚愕と落胆が隠せない。
 この店の常連は多く、一部大手ファミリアも足繁く通う人気店だ。そんな店が火事で焼失……しかも人死にまで出したと知ればショックは隠せないだろう。
 しかし二人はそれよりも、店員たちや女将の安否が気にかかって周囲に目を凝らす。最近はティズとアニエスも連れて行っていたあの店の従業員たちの笑顔に、豪快に笑う女将。その安否を知れないことには不安でおちおち冒険も出来ない。

 そんな中、ベルが見覚えのあるエプロン姿を視界に捉える。
 視線に気付いたその女性は、視線に気付いて振り返り、驚きと安心の入り混じった表情で駆け寄った。

「……あっ、ベルくん!それにリングアベルくんも!」
「シルさん!!よかった……無事だったんですね!?」
「ほかの面々は!?女将とリュー、ミィシャ、シャリアが見当たらないが、大丈夫なのか!?」
「はい!現場にいないだけで怪我もなかったよ!」

 もはやリングアベルがあの一瞬でいないメンバー全員を特定して名前まで言い当てている事には誰も突っ込まない。彼が店の女性の名前を暗記したもはもうかなり昔の話だからである。噂によると彼の脳にはこの町で出会った女性全員分のプロフィールと性格、趣味嗜好のデータが詰っているという。

「そうですか……その、店は燃えちゃったみたいですけど皆に怪我がなくてよかったです!火傷の痕なんかが残ったら一生ものの傷になりかねませんしね!」
「あら、それじゃキズモノになった時はベルくんが貰ってくれる?」

 いつものように悪戯っぽく微笑むシルだが、その笑顔にはどこか元気がない。
 ほかの従業員たちも落ち込んだり、炭化した店の痛ましい姿に涙している。
 無理もないだろう、とリングアベルは唸った。

 彼女達にとってこの店は単なる職場を越えた特別な意味のある場所だ。それは彼女たち時々口にする並々ならぬミアへの恩義と店への愛着を聞けば分かる。いわばここは自分たち
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