七話:誰が為の争い
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害が起きるのはどうしても防げない。
因みに今回の件に関しては完全にはやての独断なので切嗣の策略ではない。
何はともあれ騎士達は闇の書のページを大幅に増やすことに成功し傷つくこともなく帰ることに成功したのである。
次元空間航行艦船アースラは今しがた封鎖結界が解かれたことで明らかになったなのはの負傷により慌ただしく動いていた。
そんな中、艦長のリンディ・ハラオウンと執務官のクロノ・ハラオウンは通信主任兼執務官補佐のエイミィ・リミエッタの先程の結界の解析を静かに見守っていた。
「やっぱり、ミッド式じゃないのは確かだよ。多分、ベルカ式なんだろうけど……ちょっと違う」
「古代ベルカというのは考えられないか?」
「古代ベルカ? ちょっと待ってそれだと聖王教会のデータがあれば……」
クロノに一つの可能性を示唆されてせわしなく手を動かし始めるエイミィ。
出来れば今回の敵の情報を映像でも残しておきたかったが結界を自ら解除してあっという間に逃げたために追うことができずに情報を得ることはできなかった。
だが、半ば確信に近い形でクロノは今回の事件が己の過去と大いに関係するものだと考えていた。
検査の結果なのはの魔導師の魔力の源『リンカーコア』が異様に小さくなっていることが判明。
そして、それは本局を騒がせていた一連の事件と同じ流れであること。
このことから一級捜索指定ロストロギア―――『闇の書』が関わっていることは容易に想像できた。
後は証拠が一つでもあれば断定できるレベルなのだ。
「それにしても、立場上動けないのは仕方がないが、やっぱり……傷つくのを見るのは嫌だな」
クロノは己の立場故に事件現場に自由に赴くことのできない歯がゆさを感じる。
残って解析や指揮を執ることの大切さは身に染みて分かっているが部下や家族や友が傷つくのを見ると自分も出ていればと思わずにはいられない。
仮にもう少し連絡が取れない状態が続いていれば自分から艦長に出るように進言していただろう。
誰も彼に責任があるとは思わないが彼だけは送った者達が傷ついたのは自分のせいであると考える。
責任感の強さは美徳であると同時に危うさにもつながる。
そんな息子の姿をリンディは母としても艦長としても見守ることしかできない。
「運命っていうのはどうしてこうも悪趣味なことをするのかしら……ねぇ、クライド」
誰にも聞こえないように呟き、彼女はその顔に影を落とすのだった。
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