4部分:第四章
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」
「私は歌えないの」
少女は寂しげな笑みを浮かべてジミーに答えた。
「残念だけれど」
「残念ってまた変なこと言うな」
ジミーはこの言葉の意味がどうしてもわからなかった。
「どういうことなんだよ、それって」
「私は本当はここにはいないから」
「ここにって!?」
さらにわからない言葉であった。ジミーは眉を顰めさせるだけでなくその首も傾げさせて考えた。女の子の言葉の意味が全くわからなかったのだ。
「どういうことなんだ、それって」
「私。本当は七十年以上も前にここからいなくなったの」
女の子はまた言った。
「もうね。結構経つわね」
「それってまさか」
「そう、そのまさか」
女の子は答えた。ジミーも言葉の意味がわかった。
「わかたわね」
「ああ、そういうことか」
納得して頷いた。それならば話がわかった。
「あんた、だからなのか」
「歌えない理由は。それなのよ」
「道理で服が古いわけだ」
それもようやく納得がいった。それならば話がわかる。
「あんた、それでもずっとここにいたんだな」
「探してたのよ」
女の子は答えた。
「私の曲を歌ってくれる人。やっと見つけたわ」
「俺でいいの?」
いつもは明るい自信家のジミーも今日ばかりは違っていた。今日は女の子の前で真剣な顔で静かに謙虚になっていたのであった。
「俺なんかでさ」
「貴方だからよ」
女の子は優しい笑顔で彼に答えた。
「貴方のギターで歌って欲しいの。いいかしら」
「俺でよかったら」
彼も謙虚な声で答えた。
「歌わせてもらうよ」
「有り難う。じゃあ頼むわね」
女の子は優しい笑顔のまま彼に言う。彼もその言葉を受けていた。
「ずっとね。歌っていて」
「ああ、これからどうなるかわからないけれどな」
ジミーも答えて言う。
「歌うさ、ずっと」
「御願い。それじゃあね」
「これからどうするんだ?」
「もう伝えたいことは伝えたから」
そうジミーに答える。
「これでね」
「行くんだな」
「ええ、上に」
空を指差して言う、
「行くわ。やっと行けるわ」
「伝えたくて。ずっと残っていたしな」
「それももう終わり」
その姿が消えかけていた。本当に上に行こうとしているのがわかる。
「後は。御願いね」
「ああ。それじゃあさ」
ジミーはギターケースを開けた。そうしてギターを手に取って彼女に言う。
「最後に一曲どうだい?」
「いいの?」
「だから俺はミュージシャンだぜ」
笑って言うその言葉は笑顔だった。多分に自称であるが。
「だからさ。気にするなよ」
「そう。有り難う」
「礼を言うのも俺さ」
また言った。
「そこんところも宜しくな」
「じゃあ」
「ああ、聴いてくれよ」
ギターの演
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