1部分:第一章
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「一人旅でアメリカってのも充分無茶でしょ。それでどうやって行くのよ」
「これ一本で行くさ」
手にしたギターを奏でながら答えた。
「後はヒッチハイクでさ」
「まあやってみたらいいわ」
別に止めもしなかった。最初からそんなつもりはなかったが。
「そのかわり生きて帰って来るのよ」
「それは運次第ってことで。明日出るかさ」
「明日!?それはまた急だね」
「思い立ったが吉日さ。じゃあさ」
「ええ、元気でね」
こうして彼はギター一本でヒッチハイクをしながら所謂武者修行に出ることになった。駅前や公園でギターを奏でてお金を貰いながらあてもなく旅をはじめた。
そうしてあちこちを転々としてこの日来たのは。トロントの側にある小さな街だった。
トロントは賑わっているがこの街は静かだった。ヒッチハイクで辿り着いて最初に思ったのはこの街にギターを聴く人間がいるかどうかだった。
「大抵はいるんだけれどな」
そう呟いて街をふらりと歩きだした。歩いていると街角の寂れた場所に女の子を見た。茶色がかった金髪に黒い目の少女であった。
「可愛いな」
その少女を見た最初の感想であった。可愛いので気になって彼女に声をかけた。見れば何か格好が古臭かった。十九世紀とまではいかないがあまり新しくはない。戦前、しかも禁酒法時代のシカゴを舞台とした映画に出るような格好であった。
その彼女に声をかける。格好にいぶかしみながら。
「あのさ」
「何?」
少女はジミーに声をかけられてふとした感じで彼に顔を向けてきた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけれどさ」
「それってナンパ?」
「そう思ってくれたら幸せだね」
ジョークでこう言葉を返す。
「そのままデートでもってね」
「だったら面白いけれど。一緒にでもどう?」
「おいおい、自分から誘うのかよ」
その言葉に肩をすくめさせて苦笑いを浮かべる。
「じゃあお言葉に甘えてだけれど」
「ええ、いいわよ」
女の子もにこりと笑う。ジミーはこのやり取りに自分はかなり運がいいと思った。
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