博麗神社編
第一話 記憶の欠けた男
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眠りから覚醒したのだろう。
ただ、長い夢でも見ていたような、最も、今までずっと目を閉じていたような… 瞼が重い。
重い瞼をゆっくりと開き、改めて目を開け、覚醒する。
暗闇に慣れていた視界は、急に入ってきた光に上手く対応出来ず、眩しさを感じさせた。反射的に腕で光を遮ろうとするも、徐々に光に慣れて行く。
慣れた視界を全開まで開き、視野を広げた。
「ここは… 何処だ?」
私は誰?とでも言いたげな口振りだが、正しくそうなのだ。
自分が誰なのかも検討がつかないからだ。何故ここで横になっていて、目覚めたのか。理由も意味もわからない。
とりあえず、と。何処で身に付けたかわからぬ知識を活かし、周りを見渡した。目の前には大きな建物… 手前には御賽銭箱と思われる相応な木箱。
よく見れば後ろには鳥居。明らかに神社だ。
「知識はある…」
喋れもする。つまり言葉がわかる。
ただ、ここが何処だかわからない、自分が誰なのかわからない。一部の記憶がないと見た。
何処で仕入れた冷静さか、恐らく以前の自分はかなりの無感者だったようだ。
普通の人間ならば記憶を失ったことに対し慌てるはず… そもそもこんなこと考えないか。
いまだ起こしていない身体を起こし、下半身に多少の痺れを感じながら御賽銭箱に向かい、歩く。箱に入れる賽銭がないかどうか確かめるため、自分の身体を見てみる。
なんとも目に優しいパーカー… 自然色のパーカーのポケットに手を伸ばし、探るも、指に冷たい何かが触れた。
取り出してみると、それは小銭。なんと運が良いことだ… なんのために持っていたか知らないが、それを賽銭箱に投げ入れた。
お金を入れたらケチな巫女さんが現れるかもしれない。
なんの脈略もないが、なんとなくそう思ったのだ。
「ご利益あるわよ〜」
ほら来た。
「それはありがたいことですね。でも、もう既に不運が起こっているので…」
記憶喪失というかなり大きな不運が、だ。
人間なら誰もがするであろう苦笑いをしながら、声の持ち主の方へ顔を向けた。
派手な赤と白の巫女服を着た少女が仁王立ちしていた。
自分の歳はわからない、けれど目線からして自分の方が背丈は少女より高い。少女の方が若いのかもしれない。だが、敬語は止めず、
「ご利益はご利益として、ここはどんな神様がいるんですか?」
「え、あ…そ、そうね…… こう、なんか、凄い神様だと思うわ」
わかっていないらしい、この話についてはもう聞かず、そっとしておこう。
「と、ところで、あなたここらじゃ見かけない顔ね。何処から来たの?」
「そうですね、こう、なんか、凄い所からだと思いますよ」
わからない。という意味を込めて、先ほどの少女の言葉を真似てみる。
案の
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