暁 〜小説投稿サイト〜
赤い目
5部分:第五章
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

「どういうことだ」
「知れたこと。人間が化け物の前に姿を現わす時は一つしかないじゃろう」
「喰われる為か」
「面白いことを言う」
 だが老人はその脅しを一笑に伏した。
「そんなことの為に来る馬鹿がおるか」
「ではわからんな」
 怪物は笑いながら応えた。
「では何の為なのか」
「主を倒す為じゃ」
 老人は言った。言いながら懐から何かを取り出す。
「覚悟せよ。地獄で今までの罪を償わせてやる」
「やってみせるがいい」
 そう言いながら怪物はその手に巨大な刃を出してきた。
 料理に使うものではなかった。まるで鉈の様に巨大な刃であった。高志はそれを見て怪物を童話等に出て来る山姥の様に思った。
(そういえば近いかも)
 ふとここでこう思った。そんな彼に老人が声をかけてきた。
「あれを出しなされ」
「あれって?」
「さっき渡したじゃろう。小刀じゃ」
「あれですか」
「そうじゃ。わしはこの怪物を倒す。それで身を守りなされ」
「わかりました。それじゃあ」
「うむ」
 自分の身は自分で守れということらしい。だがどうもそれだけではないような気もした。しかしそれは黙っていた。それより
も速く老人と怪物の戦いがはじまったからである。
 老人は懐から札を出していた。そしてそれを怪物に投げつける。
「まずはこれを受けよ!」
「ヌッ!」
 札は一直線に怪物に襲い掛かる。その動きは只の札のそれとは思えなかった。まるで流星の様であった。
 それが怪物に張り付く。するとそこから白い蒸気が沸き起こった。塗炭に怪物が苦しみはじめた。
「グオオオオオオオ・・・・・・」
「どうじゃ、この札の威力は」
 老人は呻き声を挙げる怪物を見据えながら言った。
「効くじゃろう。何せ主の最も忌み嫌うものが書かれているからな」
「わしの忌み嫌うもの」
「麒麟じゃ」
 老人は言った。
「麒麟・・・・・・」
 それを聞くと怪物の顔がさらに見抜く歪んだ。恐怖の色が浮かび上がったのだ。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ