第二百二十八話 二つの策その二
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「敵もそれを見て」
「何事かと思う」
「そして動ずるのですな」
「それも誘う、ではよいな」
「はい、承りました」
「ではそれがし達これよりです」
「野に下ります」
こうしてだった、三人はそれぞれ納得したうえで信長からの追放を受け入れた。信長がこのことを天下に告げると。
やはりだった、天下は大いに驚いて言うのだった。
「何と、佐久間様に林様」
「それに安藤様もとな」
「いきなり追放とは」
「どういうことじゃ」
万民が騒いで話をするのだった。
「織田家で追放とな」
「これ自体が珍しいことじゃが」
「佐久間様達とは」
「どなたも重臣の中の重臣じゃぞ」
「佐久間様、林様なぞ」
特にこの二人はというと。
「織田家の宿老」
「四宿老のうちのお二人ぞ」
平手、柴田と並ぶだ。
「林様は朝廷との折衷役」
「佐久間様は織田家の武の二枚看板の一つ」
ここでも柴田と並んでいる。
「その方々を突如な」
「お役御免とされじゃ」
「追い出されてな」
「家はそれぞれのご子息が継がれたが」
「攻めて隠居させるが」
「追放とは」
「理由があるが」
追い出したそれはというのだ。
「仕事を怠けていた、不始末があった」
「上様に従わなかったと」
「しかしどの方もな」
「怠ける方でも不始末をされる方でもないぞ」
「前右府様への忠義も確か」
「諫言はすれど」
それでもというのだ。
「前右府様は諫言も聞かれる」
「それを理由に追い出したりもされぬ」
「ましてどの方も従わぬ方ではない」
「理由もおかしいぞ」
「一体何じゃ」
「何があったのじゃ」
誰もじっくり考えてもわからなかった、そして。
その三人の追い出されてからの動きもだ、ここで話されるのだった。
「佐久間様は高野山に入られ」
「林様は都に隠棲じゃ」
「安藤様も美濃に篭られ」
「お三方共な」
「完全に隠棲じゃ」
「そうされておるな」
まさにというのだ。
「前右府様に特に弁明もされず」
「そのままじゃな」
「静かに安土を去られ」
「何もされぬ」
「このこともおかしいな」
「全くじゃ」
こうも話されるのだった。
「まことにな」
「近頃前右府様の為されることにはおかしなことが多い」
「右大臣の官位を辞されたことといい」
「何かとな」
「妙じゃ」
「何をお考えなのか」
誰もがいぶかしんだ、だが。
それは民百姓や足軽達の間だけでだ、ある程度の石高や役職を持っている者達は至って冷静であった。織田家の家中もだ。
至って落ち着いていた、それでだった。
いつも通り働いていた、その中心である安土城もだ。
至って落ち着いていた、それで信長は平手に言った。
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