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赤い目
3部分:第三章
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の間にか完全に話に巻き込まれていた。迷惑と言えば迷惑だがこうなってしまったからには仕方のないことだとも思った。
「一旦戻るぞ」
 老人は踵を返してこう言った。
「戻るんですか」
「そうじゃ。三日後にまたわしの家に来るがいい」
「はあ」
「その間に身を清め用意をしておく。全てはそれからじゃ」
「わかりました。それじゃあ三日後。学校から帰ったらすぐ来ますね」
「いや、そんなに早くなくともよい」
「いいんですか」
「うむ。あの店が閉まってからでよい。わかったな」
「はい。それじゃあその時に来ます」
「頼むぞ」 
 こうして高志と老人はとりあえず別れた。その間に高志は新聞等で奇妙なことに目がいくようになっていた。やはりそうしたことを聞いては当然のことであった。
「関係があるのかな、やっぱり」
 新聞の社会欄を見てこう呟いた。見れば高志の住んでいる辺りでホームレスや不良の失踪が相次いでいるのである。
 それも急にだ。それまでそこにいた者が忽然と姿を消すのである。何処に行ったのか誰も知らないしわからない。だが今の高志にはその消えたホームレスや不良達の行方が何処にあるのかわかる気になっていた。
「あの店なんだろうな、やっぱり」
 そう考えるのが当たり前の様に思えてきたのだ。老人に会ってからそうであった。それを考えるとやはりあのラーメンはとても食べる気にはなれなかった。
「どうしたの、新聞なんか読んで」
 そんな彼に母親が声をかけてきた。
「それも社会欄なんか。いつもはスポーツかテレビ欄しか見ないのに」
「あ、勉強にいいかなって思ってね」
 高志はこう言ってその場を取り繕った、見れば母の目はさらに赤みを増してきていた。
「勉強に」
「うん、先生に言われたんだ。新聞を読むのも勉強にいいって。それで読んでるんだよ」
「よく言われることよね」
 母はそれを聞いてこう言って頷いた。
「私もあんたの歳にはよく言われたわ」
「やっぱり」
「どちらにしろ新聞を読むのはいいことよ。巨人が負けてたら特にね」
「巨人が」
 母は野球が好きなのである。だが巨人は大嫌いであった。高志もそうであるし父もそうであった。一家全員がアンチ巨人なのであった。
「読むのが楽しいし。やっぱり巨人は負けないと駄目なのよ」
「そうだね」
 これは全くもって同意であった。高志も両親の影響か巨人は大嫌いであった。特にあの会長だか何だかが出るとすぐにテレビのチャンネルを変える程である。見たくもない顔であった。

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