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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四十話 似て非なるモノ
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「申し訳ありません。出過ぎた事を口にしました。」
「よい……が、確かに偶には戦いを忘れることも大切だな。」
「では、そのように手配を致します……篁中尉の説得はお任せいたしま―――少々失礼します。」
一番面倒で需要なことを忠亮に丸投げしようとした今井、しかし彼女はその耳に装着されたインカムに入った通信に意識を傾けた。
「―――え、篁中尉が!?」
インカムから入った通信に表情を険しくする今井。だが、その背中に悪寒が奔った。
「……何があった。」
絶対零度の灼熱の怒気……否、これは殺気だ。
まるで肌を突きさし、剥ぎ取っていくような剣呑な殺気が後部座席から上がっていることに気づく。その発生源は言わずもがなだ。
まるで八寒地獄の最下層に叩き込まれたような錯覚すら覚えた。
「―――強姦未遂事件のようです、被害者は篁中尉と。幸い、甲斐中尉が護衛に入り、また調布基地に移動していた富士教導隊の機体が事件を目撃していた為に被害はなかったようです。」
「犯人は?」
極度に緊張を強いられる今井に淡々と問いを投げかけ続ける忠亮。そんな彼に本能的な恐怖を喚起されながらも今井もまた答える。
「調布基地付属の衛士二名。手口から常習犯だろうと甲斐中尉は予測しています。また精査した結果、薬物も所持していたと。」
「そうか、ならば奴等の過去の悪行を徹底的に暴け、そして消せ。どうせ叩けば埃が出る。あと、担当の捜査官を抱き込んで背後関係を調査しろ。薬物と催眠暗示を使用してもいい」
「それでは脳や精神に深刻なダメージを与えかねません!」
「どうせ放っておいても銃殺刑で消える塵屑の命だ。なら少しでも多くの情操を吐いて貰ったほうが有意義だ。―――それに妙に嫌な予感がする。」
この人は人間の定義が明瞭で強すぎる。
今井は忠亮の言葉とそれに込められる殺気に思わず戦慄した。
彼にとって、身内に害を為すか道を外すかした人間はすでに人間ではない、獣同然なのだ。
彼にとって、敵の区別に動物か人間かBETAか機械かというのはBETAの戦車級か、要撃級か程度の区別に過ぎないのだ。
種族が違うだけで敵という存在であることには違いがない。
普通の人が、敵と人間のどちらかで思い悩むのを彼はすでに線引きし決めている為に迷いがなく、そして強い。
(並ではないと思っていたが――このような人ではなくては、今の時代を切り開けぬ。という事か、しかし最後だけ聞けばまるで血が通わぬ悪漢だな。)
忠亮の行動や言動には、情がないという感想を抱かずには居られない節が所々に見受けられる。
しかし、それは誰よりも情に深いがゆえにそれを赤の他人に分け与える無駄を徹底的に省いているからだ。
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